本書は、なぜ北欧のデンマークから数々の名作家具が生まれたのか、そしてデンマーク家具のデザインがたどってきた流れを詳しく解説することを目的としています。特に、ヴァイキング時代から現代に至るまでの変遷 や、デンマーク家具デザインの黄金期(1940年代から60年代頃)を中心に、その背景、特徴、そしてそれを支えた人々について深く掘り下げています。読者がデンマーク家具デザインについて理解を深める一助となることを目指しています。
本書では、まずデンマークがデザインの国と呼ばれる背景にある、「協働の意識」を持ちながら国民が暮らしやすい社会をデザインしてきた歴史に触れています。デンマークにおける「デザイン」という概念が、単に美しいものを作るだけでなく、暮らし全体を整える活動であると捉えられている点を強調しています。
章立てとしては、家具デザイン史を理解するための基礎知識や、デンマークにデザインが広く定着した背景を紹介する「CHAPTER 1 デザインの国 デンマーク?」 に始まり、ヴァイキング時代から現代までのデンマーク家具の変遷を概説する「CHAPTER 2 デンマークモダン家具デザインの流れ」 が続きます。ここでは、デンマーク家具のシンプルさ、機能性、自然素材の活用、そして繊細なクラフトマンシップといった特徴が挙げられています。
最も多くのページを割いているのは、「CHAPTER 3 黄金期を彩ったデザイナーと建築家」 で、コア・クリント、ハンス J. ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ヴェルナー・パントン、ナナ・ディッツェルといった、デンマークモダン家具デザインの黄金期に活躍した主要なデザイナーや建築家たちの生涯や功績、そして彼らがどのように名作を生み出したのかが具体的に紹介されています。例えば、コア・クリントは「デンマーク家具デザインの父」と呼ばれ、過去の家具を研究し直す「リ・デザイン」の手法や、人体寸法に基づく数学的アプローチを取り入れたことが解説されています。ハンス J. ウェグナーが500脚以上の椅子をデザインしたことや、中国の椅子に影響を受けたチャイニーズチェアやYチェア、そしてザ・チェアといった代表作の系譜などが図とともに詳しく示されています。フィン・ユールは独自の感性で家具やインテリア空間をデザインし、チーフティンチェアやイージーチェアNo.45といった名作を生み出したことが紹介されています。アルネ・ヤコブセンは建築家としても知られ、SASロイヤルホテルやセント・キャサリンズ・カレッジなどのプロジェクトで家具もデザインし、アントチェアやセブンチェア、エッグチェアなどを発表した経緯が述べられています。また、ポール・ケアホルムがスチールや革を用いたミニマルで洗練された家具を追求したこと、ヴェルナー・パントンが革新的な素材や形態、大胆な色彩を用いて独特の世界観を持つ空間や家具を創造したことなどが解説されています。ナナ・ディッツェルはラタン家具のハンギングエッグチェアや、トリニダードチェアなどで知られ、ポール・カドヴィアスによるウォールユニット「ロイヤルシステム」 やニールス O. モラーの椅子 など、黄金期を支えた他のデザイナーについても紹介があります。
「CHAPTER 4 デザイナーを支えた 家具メーカーと職人たち」では、デンマークの家具製造を担ったキャビネットメーカー(家具工房)と、量産を行うファニチャーファクトリーという二つの形態に焦点を当てています。伝統的な家具づくりを支えたマイスター制度やキャビネットメーカーズギルドの役割、そしてPPモブラーのように、伝統的なクラフトマンシップと新しい技術を融合させた家具づくりを行うメーカーの姿勢などが紹介されています。また、質の高い日用品や工芸品を展示・販売したデン・パルマネンテの活動 や、一般市民に良質な家具を普及させたFDBモブラーの歴史と功績 についても述べられています。
最終章となる「CHAPTER 5 1990年代中頃から再評価期へ」 では、黄金期以降のデンマーク家具デザインが一度衰退したものの、1990年代以降に再評価が進み、「北欧デザイン」として再び注目されるようになった流れが説明されており、キャスパー・サルトやセシリエ・マンツといった現代のデザイナーたちの活動にも触れられています。
このように、本書はデンマーク家具デザインの歴史的な流れを、主要なデザイナーや彼らを支えた製造の側面、そして社会的な背景といった多角的な視点から、豊富な図版とともに分かりやすく解説しています。黄金期に焦点を当てつつも、その前後の時代や現代の動向までを概観しており、デンマークデザイン全体への理解を深めることができる内容となっています。
About
Author
多田羅 景太(たたら けいた)
Publisher
誠文堂新光社
Size
148mm×210mm(272ページ)
Content
- はじめに
- CHAPTER 1 デザインの国 デンマーク?
- 家具デザインの歴史を理解する上で、押さえておきたいデンマークの基礎知識や、デザインがデンマークに広く定着した背景などについて紹介。
- CHAPTER 2 デンマークモダン家具デザインの流れ
- ヴァイキングが活動していた頃から現代に至るまで、デンマーク家具がどのような変遷をたどってきたかの概略。
- CHAPTER 3 黄金期を彩ったデザイナーと建築家
- コア・クリントをはじめ、ハンス J. ウェグナー、フィン・ユールなど、黄金期において特に活躍したデザイナーたちの生い立ちや実績について。
- CHAPTER 4 デザイナーを支えた 家具メーカーと職人たち
- 家具デザイナーや建築家の活動を支えた、主な家具職人やメーカーについて。
- CHAPTER 5 1990年代中頃から再評価期へ
- どのような流れで衰退期から再評価期へ向かっていったかの解説と、キャスパー・サルトなど現在活躍中のデザイナーたちの活動や考え方の紹介。
本書は、これらの章を通して、デンマーク家具デザインの歴史的な流れを詳しく解説しています。また、巻末には人名の対照表なども掲載されています。
Furniture
本書は、デンマーク家具デザインが辿ってきた歴史の流れと、そこに深く関わった数々のデザイナーや建築家、そして彼らを支えた製造の現場について詳しく解説しています。本書には、デンマークデザインの黄金期を中心に、その前後を含めた多様な時代の家具が登場し、そのモデル名が具体的に紹介されています。
特に、コーア・クリントは「デンマーク家具デザインの父」として、過去の家具の「リ・デザイン」や数学的アプローチを用いて家具をデザインしました。彼の手がけた家具としては、1927年にリ・デザインされたレッドチェア(ルド・ラスムッセン製)や、ノックダウン方式のサファリチェア(ルド・ラスムッセン製)が挙げられます。また、1930年には折り畳みスツールのプロベラ(プロベラ・スツール)をデザインしており、ファーボー美術館のためにデザインされた椅子はファーボーチェアとして紹介されています。教会で使用される椅子もデザインしており、これらは総称してチャーチチェアと呼ばれ、その中にはシェーカーチェアやJ39が含まれます。クリントは人体寸法に基づく家具設計も行っており、食器棚やドレッシングテーブル(ルド・ラスムッセン製)などもデザインしました。
コア・クリントの教え子であるオーレ・ヴァンシャーは、師の思想を受け継ぎながらも独自のスタイルを確立し、コロニアルチェアやエジプシャン・スツールなどの名作を生み出しました。彼はA.J. イヴァーセン工房とも協働し、家具を制作しています。
FDBモブラーの設立に関わったボーエ・モーエンセンは、一般市民に良質な家具を普及させることに貢献しました。彼のデザインした家具には、自宅用のスポークバックソファや、革を用いたハンティングチェア、そしてスペインの椅子に影響を受けたスパニッシュチェアなどがあります。アームチェア3238も彼の作品として紹介されています。
「椅子のマイスター」とも称されるハンス J. ウェグナーは、生涯で500脚以上の椅子をデザインしました。FDBモブラー向けにはピーターズチェアをデザインし、中国の椅子をリ・デザインしたチャイニーズチェアには、FH4283やFH1783(PP66)といったモデルがあります。彼の最もよく知られた作品としては、ラウンドチェア(JH501)があり、後にザ・チェアとして世界的に有名になりました。その他にも、鶏の尾羽のような背を持つピーコックチェア(製品番号JH550 (PP50))や、成型合板の技術を取り入れた**Yチェア(CH24)**など、数多くの椅子を生み出しました。PPモブラーによって製造されているウェグナーの家具には、PP201、PP62/63、PP58、ザ・チェア(PP501)、PP56チャイニーズチェア、カウホーンチェア(JH505/PP505)、ブルチェア(JH518/PP518)、Vチェア(CH24)、PK15などが紹介されています。
建築家としても著名なアルネ・ヤコブセンは、フリッツ・ハンセンとの協力のもと、革新的な成型合板の椅子をデザインしました。代表的なものに、アントチェア(3本脚と4本脚がある)や、その後の改良で生まれたセブンチェア(キャスター付きもある)があります。SASロイヤルホテルやその他のプロジェクトでデザインされた家具には、エッグチェア、スワンチェア、ドロップチェア、ジラフチェアといった名作があり、グランプリチェアや、通称リリーと呼ばれるエイトチェアも彼のデザインです。
独自の有機的なフォルムが特徴のフィン・ユールは、ニールス・ヴォッダーとの協働により多くの名作を生み出しました。彼のデザインした家具には、ペリカンチェア、ポエトソファ、そして「世界一美しいアームを持つ椅子」と称されるイージーチェアNo.45があります。その他にも、グラスホッパーチェアや、国連信託統治理事会会議場のためにデザインされたチーフティンチェア、そしてウォールクロックなどが紹介されています。
スチールや革、籐など、多様な素材を用いたミニマルで洗練されたデザインで知られるポール・ケアホルムは、数多くの家具をデザインしました。彼の作品には、PK25、PK0、PK22、折り畳みスツールのPK91、ダイニングチェアのPK11やPK9、ラウンジチェアのPK31やPK27、コーヒーテーブルのPK61、ダイニングテーブルのPK54、室内用パーティションのPK111、木製チェアのPK15、そしてバウハウスの影響を受けたPK20など、多岐にわたります。オーレ・ヴァンシャーもデザインしたエジプシャン・スツールもケアホルムの作品として挙げられています。
大胆な形態や色彩で独自の世界観を表現したヴェルナー・パントンは、へリット・トーマス・リートフェルト作をリ・デザインしたジグザグチェアや、初期のプラスチック一体成型椅子であるSチェア(パントンチェアとも呼ばれる)、ワイヤーコーンチェア、システム1・2・3シリーズ(フリッツ・ハンセンから発表)、タタミチェア、コーンチェアといった革新的な家具を数多く発表しました。
女性デザイナーであるナナ・ディッツェルは、ラタンを用いたハンギングエッグチェアで特に有名です。彼女は他にも、トリニダッドシリーズ(フレデリシアファニチャー製)に含まれるトリニダードチェアや、ファンチェア、ベンチ・フォー・ツー、屋外用のシティベンチなど、多様な家具をデザインしています。
黄金期を支えたその他のデザイナーとしては、機能的なウォールユニットであるロイヤルシステムをデザインしたポール・カドヴィアス、そしてオーラ・モルゴー・ニールセンとヴィットが共同でデザインし、ソボーモブラーが製造したノックダウン方式のアームチェアAXチェアが紹介されています。
これらの家具モデルは、それぞれのデザイナーの哲学や当時の技術、そしてデンマークの暮らしや文化を反映しており、本書を通じてその背景とともに詳しく知ることができます。
Designer/Creator
本書には、デンマーク家具デザイン史において重要な役割を果たした多くのデザイナーや建築家、そして彼らを支えた職人やメーカー関係者などが含まれています。
- A. J. Iversen
- Aksel Bender Madsen
- Ole Wanscher (オーレ・ヴァンシャ―)
- Børge Mogensen (ボーエ・モーエンセン)
- Carl Hansen (カール・ハンセン)
- Cecilie Manz (セシリエ・マンツ)
- Ejnar Larsen (アイナ・ラーセン)
- Erik Jørgensen (エリック・ヨルゲンセン)
- Finn Juhl (フィン・ユール)
- Flemming Lassen (フレミング・ラッセン)
- Fritz Hansen (フリッツ・ハンセン)
- Grete Jalk (グレーテ・ヤルク)
- Gudmundur Ludvik (グドモンドゥル・ルードヴィク)
- Hans J. Wegner (ハンス J. ウェグナー)
- Hans Sandgren Jakobsen (ハンス・サンドグレン・ヤコブセン)
- Hee Welling (ヒー・ウェリング)
- Henrik Tengler (ヘンリック・テングラー)
- Ib Kofod-Larsen (イブ・コフォード・ラーセン)
- Jacob Kjær (ヤコブ・キェア)
- Johannes Hansen (ヨハネス・ハンセン)
- Johnny Sørensen (ヨニー・ソーレンセン)
- Jørgen Bækmark (ヨルゲン・ベクマーク)
- Jørgen Gammelgaard (ヨルゲン・ガメルゴー)
- Kaare Klint (コア・クリント)
- Kai Kristiansen (カイ・クリスチャンセン)
- Kasper Salto (キャスパー・サルト)
- Kay Bojesen (カイ・ボイエセン)
- Louise Campbell (ルイス・キャンベル)
- Mogens Koch (モーエンス・コッホ)
- Nanna Ditzel (ナナ・ディッツェル)
- Niels O. Møller (ニールス・オットー・モラー)
- Niels Vodder (ニールス・ヴォッダー)
- Orla Mølgaard-Nielsen (オーラ・モルガード・ニールセン)
- Peter Hvidt (ピーター・フィード)
- Poul Kjærholm (ポール・ケアホルム)
- Poul Volther (ポール・ヴォルター)
- Rud Thygesen (ルード・テュエセン)
- Rudolph Rasmussen (ルドルフ・ラスムッセン)
- Søren Holst (ソーレン・ホルスト)
- Thomas Bentzen (トマス・ベンツェン)
- Thomas Sigsgaard (トマス・シグスゴー)
- Verner Panton (ヴェルナー・パントン)
このリストには、本書の主要な章(特にCHAPTER 3)で詳しく紹介されているコア・クリント、ウェグナー、フィン・ユール、ヤコブセン、ケアホルム、パントン、ディッツェルといった著名なデザイナーたちが含まれています。また、現代のデザイナーであるキャスパー・サルトやセシリエ・マンツ、黄金期を支えたデザイナーやメーカー関係者であるポール・カドヴィアスやニールス・O・モラー、アイナ・ラーセン なども含まれています。
Manufacturer
本書では、デンマークの家具製造を担う組織として、伝統的なクラフトマンシップに基づく小規模な**家具工房(キャビネットメーカー)と、より近代的なファニチャーファクトリー(量産メーカー)**の二つの形態が紹介されています。特に黄金期には、家具工房やメーカーがデザイナーと協力して名作を生み出したことが強調されています。
以下に、本書で言及されている家具の製造に関わった主な名称を挙げます。
- FDBモブラー (FDB Møbler):生活協同組合FDB の家具販売部門として設立され、良質な家具を市民に普及させる役割を担いました。ボーエ・モーエンセンやウェグナーもデザインを提供しました。
- フリッツ・ハンセン (Fritz Hansen):1878年には既にシンプルなオフィスチェアを製作しており、コア・クリント、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ヴェルナー・パントン など、多くの著名デザイナーの作品を製造しています。ヤコブセンのアントチェアやセブンチェアなどの成形合板家具を量産しました。
- ルド・ラスムッセン工房 (Rud. Rasmussen):コア・クリントが多くの名作家具を製作した工房です。創業者のルドルフが工場経営を引き継ぎ、一時期は存続の危機に瀕しましたが、現在はカール・ハンセン&サンに引き継がれています。
- PPモブラー (PP Møbler):ハンス J. ウェグナーがヨハネス・ハンセン工房閉鎖後、家具製造ライセンスを次々と取得し、多くの家具製造を依頼した工房です。伝統的なクラフトマンシップと新しい加工技術を融合させた家具づくりを行っています。ナナ・ディッツェルとの関連も言及されています。
- ヨハネス・ハンセン工房 (Johannes Hansen):ウェグナーが自身のアイデアを練り上げ、ピーコックチェア やチャイニーズチェア などを共に製作した工房です。ウェグナーはここで木工マイスターとして経験を積みました。
- フランス & サン (France & Søn):オーレ・ヴァンシャーの作品を製造したメーカーです。ボーエ・モーエンセン やフィン・ユール の製造にも関わっています。
- P. J. ファニチャー (P. J. Furniture):オーレ・ヴァンシャーの作品「コロニアルチェア」を製造したメーカーです。
- フレデリシア・ファニチャー (Fredericia Furniture):ボーエ・モーエンセンのスパニッシュチェアなどを製造したメーカーです。ナナ・ディッツェルがデザインしたトリニダードシリーズも製造しています。
- ニールス・ヴォッダー (Niels Vodder):フィン・ユールの挑戦的なデザインを実現する上で、腕の良い家具職人として協力した人物です。ユールと共に20年以上、デンマークモダン家具デザインを代表する家具を数多く生み出しました。
- エリック・コル・クリステンセン (Erik Kol-Kristensen):ポール・ケアホルムの長年のパートナーであり、彼の家具シリーズの製造を担ったメーカーです。
- ヴィトラ (Vitra):ヴェルナー・パントンが1960年代以降に協力し、パントンチェアなどの革新的な家具を開発・製造したスイスのメーカーです。
- トネット (Thonet):ヴェルナー・パントンがジグザグチェア やSチェア の製造に関連して言及されています。
- S. Sommer:ジグザグチェアを製造したメーカーとして言及されています。
- ヤマカワ (Yamakawa):ナナ・ディッツェルのハンギングエッグチェアを日本市場向けに製造した日本のメーカーです。
- ハウス・オブ・フィン・ユール (House of Finn Juhl):フィン・ユールのベリカンチェアなどを製造したメーカーとして言及されています。
また、第4章で紹介されている「キャビネットメーカーズギルド展」に出展した家具工房のリストには、上記以外にも多数の工房や会社名が挙げられています。これらは、伝統的な家具づくりを支え、デンマーク家具の発展に寄与した製造者たちです。リストには以下のような名称が含まれます:
- A. J. Iversen 工房
- C. B. Hansen’s Etablissement
- Carl Hansen & Søn (Chr. Wolff)
- Sorø Stolefabrik
- Vejle Stole og Møbelfabrik
- Normina A/S
- With Nielsen
- Børge Bak
- H. M. Birkedal Hansen
- L. P. Merck
- Holger Lassen & With Nielsen
- Knud Willadsen
- Otto Meyer
- Thysen Nielsen
- Verner Birkholm
- Adolf Jørgensen
- Poul Bachmann
- Virum Møbelsnedkeri
- Anton Kjær
- S. Jørgensen
- Georg Carstens
- I. C. Groule’s Eftf
- Jørgen Christensen
- N. C. Sørensen Kjær
- Ereben Birch & Henning Jensen
- Bjarne Petersen
- J. C. Groule
- Paul Jensen
- S. Møller Jørgensen
- Wegge & Dalberg
- A. Donner
- Birkedal Hansen & Søn
- Brdr. J. & P. S. Larsen
- Carl M. Andersen
- Chr. Jørgensens Sønner
- Chr. Wegge
- E. Chr. Jørgensen
- G. Forslund
- Gunnar Forslund
- H. C. Winther
- Holger Johannesen & Co.
- Knud Knudsen
- Leschly Jacobsen
歴史的な組織としては、1815年に閉鎖された王立家具商会も言及されています。これらのメーカーや工房は、デザイナーたちのアイデアを形にし、デンマーク家具デザインが世界的に高く評価される基盤を築きました。
Review
『流れがわかる! デンマーク家具のデザイン史』は、なぜ北欧の小さな国デンマークから世界的に愛される数々の名作家具が生まれたのか、その奥深い理由と歴史的な変遷を体系的に解き明かす一冊です。単に著名なデザイナーとその作品を紹介するだけでなく、ヴァイキング時代にまで遡る歴史的背景から、人々の暮らしをデザインするというデンマーク独自の「協働の意識」、そして1940年代から60年代にかけてのデンマークモダン家具デザインの黄金期 に至る流れを丁寧に解説しています。
本書の最大の魅力は、コア・クリント、ハンス J. ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ヴェルナー・パントン、ナナ・ディッツェル といった、デンマークデザインを代表する巨匠たちの生涯と哲学、そして「ザ・チェア」や「Yチェア」、「セブンチェア」、「イージーチェアNo.45」といった [会話履歴] 名作中の名作がいかにして誕生したのかが、豊富な図版とともに詳しく解説されている点です [会話履歴]。彼らのデザインが、単なる造形的な美しさだけでなく、機能性や素材への深い敬意、そして伝統的なクラフトマンシップといかに結びついていたのか が、具体的なエピソードを交えて理解できます。
さらに、この本はデザインの担い手であるデザイナーだけでなく、彼らのアイデアを実現可能にした家具メーカー や伝統的な家具工房、そして国民に質の高い家具を普及させたFDBモブラー やデン・パルマネンテ といった、デザインを社会に根付かせ、発展を支えた製造・流通の側面にも焦点を当てています。デザインが特別なものではなく、人々の暮らし全体をより良くするための活動であるというデンマークの思想 が、具体的な事例を通して浮かび上がってきます。
「シンプルで機能的、そして美しい」 と称されるデンマーク家具デザインの本質が、歴史、文化、そしてそれを生み出した人々の情熱とともに描かれているこの一冊は、デザインに関心のある方はもちろん、日々の暮らしを豊かにする家具を選びたいと考えている方にとっても、きっと新たな発見と深い共感をもたらすはずです。デンマークデザインの「流れ」を知ることで、目の前にある一つの椅子やテーブルが、いかに豊かな背景を持って私たちの元に届けられているのかを感じられる、まさに家具を見る目が変わるような、読み応えのある書評に値する内容が詰まっています。