本書ではデンマークの家具デザイナーであるハンス・J・ウェグナーの仕事と思想に焦点を当てています。本書は彼のデザイン哲学、素材へのアプローチ、制作プロセスなどを紹介しています。また、彼の代表的な椅子や自宅、さらには彼が協力した人々や展覧会についても触れており、ウェグナーのデザインがどのようにして生まれ、世界的に評価されるようになったかを多角的に理解できます。特に、木材の選択と加工、そしてユーザーとの関係性がデザインにおいていかに重要であるかが強調されています。
この本は『HANS J WEGNER on Design』というタイトルで、ハンス・J・ウェグナーのデザインとその哲学に焦点を当てた内容です。イェンス・ベルンセンによって編集され、日本語版は1995年2月14日にリビング・デザインセンターおよび光琳社出版株式会社から出版されました。
この本は、ウェグナーの世界を垣間見ることができる一冊です。彼の家具デザインの歴史における位置づけに光を当てており、彼の作品が、アルファベットにおける新しい文字のように、それ自体で独立した存在であると述べています。
主な章立てから、本書が以下の内容を扱っていることがわかります:
- 木工職人がデザインの歴史を記す: ウェグナーがマスター・キャビネットメーカーであった父のピーター・M・ウェグナーからどのように学び、職人としての技術と経験がどのようにデザインの歴史を築いてきたかを探ります。手仕事から工業生産への移行についても触れられています。
- デザインはプロセスである: ウェグナーのデザインの開始、スケッチや1:5、1:1の縮尺モデルを用いた作業、そして製作図に至るまでのプロセスを詳細に説明しています。椅子の製作は、良い椅子を作るという課題であり、決して終わりのない作業であるとウェグナーは語っています。
- 製作図: 家具製作に必要な詳細な図面について述べており、ウェグナーはこれらを非常に正確に作成できる数少ないデザイナーの一人であるとされています。
- ウェグナーと木: 木材という素材に対するウェグナーの深い理解とその扱い方、異なる木材の特性と用途、そして木材そのものへの愛情について探求しています。木目はデザインの一部であり、仕上がった製品の外観を決定的に左右すると述べています。
- ティングレフパイの家: 1962年にウェグナー自身が家族のためにデザインした家について紹介しています。シンプルでかつ、大工の技術と精密さをもって作られた家です。ウェグナーのデザイン事務所と工房が1階の多くを占めています。
- 作品と参考文献: ウェグナーの作品リスト、受賞歴、作品が展示されている場所などが含まれています。
また、本書ではウェグナーの核となるデザイン思想が紹介されています。例えば、木目はデザインの一部であること、ユーザーはデザインの一部であり、座る人がいて初めて椅子は完成すると考えること、家具に裏側があってはならないこと、つまりどの角度から見ても美しくあるべきだということ、椅子に個性があるべきであること、そして品質こそが最も重要であり、それがコストを伴うことを受け入れるべきだという考え などです。さらに、職人の知識が失われつつあることへの懸念 や、物事はできるだけ本物で自然であるべきという原則、不要な素材を取り除くこと、構造に論理があり、それが示されるべきであること にも言及しています。
この本は、ウェグナーとイェンス・ベルンセンとの数多くの対話に基づいており、ウェグナーのデザインにおける基本的な考え方、目標、そしてデザインが生まれるプロセスが詳述されています。これは、若い世代のデザイナーにとって指針となることが意図されています。
本書で紹介されている有名な作品には、ラウンドチェア (The Round Chair)、ウィッシュボーンチェア (The Wishbone Chair)、チャイニーズチェア (The Chinese Chair)、バレットチェア (The Valet Chair)、フラッグハリヤードチェア (The Flag Halyard Chair)、オックスチェア (The Ox-chair)、フープチェア (The Hoop Chair) などがあります。
ウェグナーは、木材を含む様々な素材を扱い、素材の本質、可能性、限界を理解することが非常に重要だと考えていました。彼のデザインは、主に木材を用いたものが多いですが、彼のアイデアは家具デザインの分野を超えて広く応用可能であり、現代においてもその妥当性と重要性を保っています。
About
Author
Jens Bernsen
Publisher
リビングデザインセンター
Size
24.5 × 23.5 ㎝(120ページ)
Content
1.序
2.木工職人が記すデザインの歴史
3.デザインはプロセス
4.製作図
5.ウェグナーと木
6.ティングレフバイの家
7.作品目録とレファレンス