Henning Larsen | ヘニング・ラーセン


Story

ヘニング・ラーセン(Henning Larsen, 1925-2013)は、「光の巨匠」として知られるデンマークを代表する建築家であり、20世紀後半の世界建築においてスカンジナビア・モダニズムを拡張した中心人物です。彼の建築哲学の核心には「光」「コンテクスト」「ヒューマニズム」の三要素があり、それらを融合させることで普遍的な価値を持つ建築を創造しました。

ユトランド半島の自然光に育まれた幼少期の体験は、彼にとって生涯にわたる設計思想の出発点となりました。王立芸術アカデミーで基礎を学んだ後、AAスクールやMITなど国際的な舞台で学び、さらにアルネ・ヤコブセンやヨーン・ウッツォンの事務所で実務経験を積んだことが、彼の独自の建築言語を形成する大きな基盤となりました。

1959年に自身の事務所を設立して以降、ラーセンは教育者、思想家としても活躍し、建築雑誌『SKALA』を創刊して批評的議論のプラットフォームを提供しました。彼の作品は、記念碑的でありながらも常に人間の体験に根差しており、光を「主要な建材」として扱いながら空間を構築する特徴があります。サウジアラビア外務省ビル、マルメ市立図書館、ハルパ・コンサートホールといった国際的なプロジェクトでは、現地の文化や環境を深く読み解き、それを建築言語へと翻訳する手腕を発揮しました。

家具や照明の分野でもフリッツ・ハンセン社やBrdr. Krügerとの協働を通じて作品を残し、建築的な哲学を小さなスケールに凝縮しています。特に「HL ウォールランプ」では、経年変化する銅の素材を選び、光と時間の関係性を表現しました。

彼の遺産は美しい建築群にとどまらず、「建築はよりよい社会をつくるための道具である」という思想そのものにあります。現代においても、彼の事務所はサステナブルデザインや学際的研究を継承し続け、気候変動や社会的公正といった課題に対して先進的な解決策を提示しています。ヘニング・ラーセンは、20世紀に活動した「21世紀の建築家」として、建築の可能性を未来へと開いた存在なのです。


About

Year: 1925–2013
Place: Videbæk(ヴィーデベック)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン), Brdr. Krüger(ブラザーズ・クリューガー)


History

1925: デンマーク西部ヴィーデベックに生まれる
1949: デンマーク王立芸術アカデミー建築学科に入学
1951: ロンドンのAAスクールに留学
1952: マサチューセッツ工科大学(MIT)に学ぶ
1952: アルネ・ヤコブセン事務所に勤務、アントチェア制作に関与
1958: ヨーン・ウッツォン事務所に参加
1959: ヘニング・ラーセン・アーキテクツを設立
1968: デンマーク王立芸術アカデミー教授に就任(~1995)
1978: トロンハイム大学ドラッグヴォルキャンパス竣工
1984: サウジアラビア外務省ビル竣工、アガ・カーン建築賞を受賞
1984: ゲントフテ図書館竣工
1985: 建築雑誌『SKALA』を創刊
1996: ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館増築竣工
1999: マルメ市立図書館「光のカレンダー」竣工
2004: コペンハーゲン・オペラハウス竣工
2004: コペンハーゲンIT大学竣工
2008: ウプサラ・コンサート&コングレスホール竣工
2009: ザ・ウェイブ集合住宅竣工
2011: ハルパ・コンサートホール&会議センター竣工、ミース・ファン・デル・ローエ賞を受賞
2013: コペンハーゲンにて逝去


Furniture

・Ant Chair(with Arne Jacobsen) | アントチェア
・Model 9230 Chair
・HL Wall Lamp
・Echo Chair

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