Easy Chair Prototype | イージーチェア プロトタイプ


About

Designer: Børge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)
Manufacturer: Erhardt Rasmussen(エアハルト・ラスムッセン)
Year: 1951
Material: Oak, Leather, Canvas
Size: W × D × H(SH)


Story

ボーエ・モーエンセンがデザインし、名匠家具職人エアハルト・ラスムッセンによって製作されたイージーチェア・プロトタイプは、デンマーク・モダンの歴史において極めて重要な位置を占める作品です。この椅子は、機能性を重視しつつも素材の誠実さを生かしたモーエンセンの思想を、試作段階において体現した一点といえます。

フレームには経年変化を重ねたオーク材が用いられ、時間とともに深みを増した質感は、この作品が歩んできた歴史を物語っています。座と背には砂色のキャンバスベルト、そしてオリジナルの革クッションが配され、素材が本来持つ機能性と耐久性が示されています。モーエンセンが好んだ天然素材の組み合わせは、後の「ハンティングチェア」や「スパニッシュチェア」に受け継がれる設計思想を先取りするものです。

この作品は1950年のキャビネットメーカーズ・ギルド展を念頭に製作され、展示で得られたフィードバックを基に翌年デザインが完成したと考えられます。そのため、年代表記に若干のずれがあるものの、これはプロトタイプ特有の「進化の過程」を記録する証拠となっています。

ラスムッセン工房との協業は1939年から始まり、モーエンセンの初期作品を支える重要な役割を担いました。このプロトタイプもまた、その協力関係の結晶であり、熟練職人の技術とデザイナーの理念が融合した結果として誕生したものです。

このイージーチェアは単なる試作家具ではなく、後のモーエンセン作品群に連なる思想的・構造的な出発点であり、デンマーク・モダンの理念を物理的に刻み込んだ歴史的遺産といえるでしょう。

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