About
Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(エイヴィン・コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1957
Material: Steel, Leather, Plywood
Size: W190 × D80 × H30 cm
Story
PK 80は、1957年にポール・ケアホルムによってデザインされたデイベッドです。彼のデザイン哲学を象徴する作品であり、無駄を削ぎ落とした構造と素材へのこだわりが見事に融合しています。
このデイベッドは、ミース・ファン・デル・ローエとリリー・ライヒが手がけた1930年代のソファからインスピレーションを受けています。ケアホルムはそれを単なる模倣ではなく、デンマーク・モダニズムの文脈の中で新しい形に昇華させました。そのフォルムには古代ローマの寝椅子を思わせる厳格さと静謐さが漂い、単なる家具以上の建築的存在感を放ちます。
素材には、クロームメッキあるいはサテン仕上げのステンレススチールフレームが用いられ、上部に革張りのルーズマットレスが置かれます。さらに塗装された合板の台座が組み合わされ、構造の安定性と洗練を実現しています。シンプルに見える構造の裏には、ゴム製のリングによる固定など高度な技術的工夫が隠されています。
E. Kold Christensen社が最初に製造を担い、ケアホルムの死後はフリッツ・ハンセン社が生産を継承しました。この二つの時代を経てPK 80は継続的に生産され、今なお世界中の美術館やコレクションで高く評価されています。
PK 80は「家具建築家」と称されたケアホルムの思想を体現する作品です。空間における存在感は彫刻的でありながら、実用性を損なうことなく、機能と美を一体化させています。革は経年変化によって豊かな表情を帯び、使い込むほどに価値を増していきます。まさにデンマーク・モダニズムの知性と詩情を宿す傑作といえるでしょう。