About
Designer: Flemming Lassen(フレミング・ラッセン)
Manufacturer: Jacob Kjær(ヤコブ・ケア)
Year: 1935
Material: Walnut, Wool
Size: Width 195 × Depth 82 × Height 76 cm
Story
1935年にフレミング・ラッセンがデザインし、名工ヤコブ・ケアが製作した3人掛けソファは、デンマーク・モダニズムの黎明期を象徴する傑作です。丸みを帯びた柔らかなフォルムは、ラッセン特有の「人間中心のデザイン哲学」を体現しており、当時の国際的な機能主義の直線的な様式から意識的に距離を置いています。
アームと背もたれが流れるように連続する造形は、まるで彫刻のような一体感を生み出し、座る者を包み込むような安心感を提供します。ベージュのウール張りと、側面や背に施された手縫いのボタンが、温かみと職人技の繊細さを強調しています。
このソファには「ヴィルヘルム・ソファ」という呼称が与えられることがありますが、1935年当時の展示記録やオークション資料にはその名称は確認されていません。固有名を持たず、製作年代と製作者で識別されていた時代背景を反映しています。後年の再生産やブランド戦略によって命名された可能性が高いと考えられます。
また、1940年代には寸法や素材の異なる類似モデルがケアの工房から製作されており、シープスキン張りやアッシュ材脚を備えるなど、複数のバリエーションが存在しました。これは大量生産以前のデンマーク家具に特徴的な、個別生産と職人技術に根ざした柔軟な製作姿勢を示しています。
この特定のソファは、長らくケアの家族によって保管されていたことが確認されており、明確な来歴を伴う真のオリジナルとして評価されています。2018年のオークションでは記録的な価格で落札され、初期デンマーク・モダニズム作品に対する国際的な再評価を象徴する存在となりました。