PK11 Arm Chair | アームチェア


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1957
Material: Brushed stainless steel, Ash, Leather
Size: W 64 × D 44 × H 69 cm / SH 44 cm


Story

PK11 アームチェアは、1957年にポール・ケアホルムがデザインした代表作のひとつです。三本脚のステンレススチールフレームという大胆な構造を持ち、当時の木材中心のデンマーク家具デザインの潮流とは一線を画しています。ケアホルムはスチールを単なる工業素材ではなく「芸術的な価値を持つ自然素材」として捉え、木材やレザーと同等に扱うことで、素材の対話を引き出しました。

最も特徴的なのは、三本脚のフレームがもたらす軽快さと彫刻的な均衡です。四本脚が一般的な椅子において、ケアホルムは敢えて本数を減らすことで、数学的な論理性と視覚的な軽やかさを同時に成立させました。アッシュ材のアームと柔らかなレザーのシートは、冷たいスチールと温かみのある自然素材との調和を示し、彼の思想である「構造の純粋性」と「素材への敬意」を体現しています。

PK11 はまた、PK51 ワークテーブルの伴侶として構想され、単体の美しさに加えて、空間全体を統一的に構成する建築的な役割を果たしました。ケアホルムの「家具は空間のサイズを決定する最も重要な要素である」という理念が、この組み合わせによって最も鮮明に表れています。

生産は当初、E. コールド・クリステンセン社によって行われ、その後1982年以降はフリッツ・ハンセン社へと引き継がれました。2014年にはケアホルム・コレクション全体が統合され、PK11 もその一部として正規に製造・販売されています。初期のクリステンセン製は希少性が高く、現代では特にコレクターズアイテムとして評価されています。

今日でもPK11 アームチェアは、デザイン史において「建築的な椅子」と称される存在です。シンプルかつ緻密な造形美は、現代のミニマルな空間においても違和感なく溶け込み、ケアホルムの哲学が時代を超えて生き続けていることを示しています。

PAGE TOP