About
Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1961
Material: Stainless steel, Canvas, Leather
Size: W59 × D45 × H41 c
Story
PK91は、ポール・ケアホルムが1961年にデザインした折りたたみ式スツールであり、20世紀デンマークデザインの中でも特に象徴的な作品のひとつです。ケアホルムは金属を芸術的な素材として捉え、従来の木材中心のデザイン潮流とは一線を画す革新的なアプローチを展開しました。本作はその哲学を凝縮した、端正で静謐な存在感を放つ椅子です。
この作品は、ケアホルムの恩師コーア・クリントが1930年に発表した「プロペラスツール」へのオマージュとして生み出されました。クリントが木材で構築した構造を、ケアホルムはステンレススチールで再解釈し、より軽快で強度の高い折りたたみ機構を実現しました。ここには世代を超えた知的対話と素材の進化が明確に表れています。
PK91の構造的な特徴は、2枚のフラットバー状のスチールフレームをプロペラのようにねじり合わせた形状にあります。このねじれは単なる装飾ではなく、強度を高めるとともに、スムーズな開閉を可能にしています。交差部分にはボールベアリングが組み込まれ、機能性と美観を両立する構造美が追求されています。
座面にはキャンバスや革が採用され、冷たい印象のスチールと温かみのある素材が見事なコントラストを形成しています。軽快さと重厚さを選択できる仕様は、ケアホルムが掲げた「素材の対話」という理念を体現しており、スツールとしてだけでなくサイドテーブルやオットマンとしても機能する高い汎用性を備えています。
PK91は現在もフリッツ・ハンセンによって製造されており、ニューヨーク近代美術館やヴィクトリア&アルバート博物館をはじめとする世界的な美術館に収蔵されています。その存在は、単なる折りたたみ椅子を超え、芸術と機能の融合を示すデザイン史上の重要な遺産として高く評価され続けています。