PK71 Nesting Table | ネスティングテーブル


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン) / E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン)
Year: 1957
Material: Steel, Acrylic
Size: W280 × D280 × H285(Large) / W265 × D265 × H270(Medium) / W250 × D250 × H255(Small)


Story

PK71 ネスティングテーブルは、ポール・ケアホルムが1957年に発表した、最小単位の建築的実験とも言える作品です。3つのサイズの正方形テーブルが入れ子状に収まる構造は、単なる省スペース設計にとどまらず、配置や使い方の多様性を可能にしました。その簡潔な形態は、ケアホルムの思想の根幹である「引き算の美学」を具現化しています。

フレームは角鋼を用いた精密な溶接構造で、サテン仕上げにより冷たさを抑えた静謐な光を放ちます。天板にアクリルを採用した点は特筆すべき特徴で、軽量性や加工性、耐久性を兼ね備えた素材として機能と美を同時に支えています。この選択は「素材の特性を最大限に引き出す」というケアホルムの哲学を端的に示しています。

PK71は、家具を「建築の断片」と捉えたケアホルムの視点からも重要な位置を占めます。小さなスケールながら、後の大型テーブル群やシステム的なデザインに連なる「原点」として設計されたものであり、その体系的なデザイン言語の一部を成しています。作品群に付与されたPKナンバーは、彼の思想が一貫した文法に基づくことを象徴しており、PK71はその最小単位として存在しています。

製造は当初、エヴィン・コールド・クリステンセンとの協業によって行われ、オリジナルピースには「DENMARK」の刻印が残される場合があります。1982年以降はフリッツ・ハンセン社が継承し、今日もなお高品質なリイシューを続けています。現代の空間に溶け込みながらも、デザイン史的価値を持つ象徴的な家具として、多くの美術館コレクションにも収蔵されています。

PK71は、単なる機能的家具を超え、素材と構造、機能と美学、伝統と革新を統合した「彫刻的な構造物」として評価され続けています。その存在は、ケアホルムが掲げた「家具建築家」という理念の凝縮であり、20世紀デザイン史における普遍的なマイルストーンとなっています。

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