About
Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1952
Material: Stainless steel, Flag halyard
Size: W63 × D76 × H75 cm
Story
PK25は、ポール・ケアホルムが22歳の時にコペンハーゲン美術工芸学校の卒業制作として発表した作品であり、別名「エレメントチェア」とも呼ばれています。当時のデンマーク家具は木材を中心とする有機的なフォルムが主流でしたが、PK25は工業素材であるスチールを芸術的に昇華させることで、ケアホルムの独自性を鮮烈に印象づけました。
最大の特徴は、一本のスチール板を曲げて成形した溶接のない連続的なフレーム構造です。フレームはマットクローム仕上げのスプリングスチールで、弾性による快適な座り心地を提供します。座面と背もたれにはヨット用ロープであるフラッグハリヤードが張られ、通気性と耐久性を兼ね備えた機能的な素材選択となっています。麻の外皮と合成繊維の芯材が組み合わされることで、長期間にわたり張りを維持する工夫が施されています。
PK25は1955年からE. コールド・クリステンセン社によって製造され、その後1982年からはフリッツ・ハンセン社が生産と販売を継承しています。この製造の系譜は、PK25が途絶えることなく現代まで継続されてきた大きな要因となっています。
PK25はまた、後に続くPK22などの「PKシリーズ」の出発点でもあります。PK22では座面下に補強バーを設けることで、PK25の思想を発展させながら快適性を高めました。PK25は、建築空間との対話を重視する「家具建築家」としてのケアホルムの思想を象徴する作品であり、合理性と詩情を融合させた不朽の傑作として評価されています。