GE233 Sofa | ソファ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: GETAMA(ゲタマ)
Year: 1952
Material: Solid beech or oak frame, spring cushions (epeda type), wool or leather upholstery
Size: W 126 × D 78 × H 71 cm


Story

GE 233は、1950年代初頭に確立されたハンス・J・ウェグナーとゲタマ社の協業を象徴する作品として位置づけられます。木工職人としての訓練を受けたウェグナーは、構造を可視化する設計思想を一貫して重視し、視覚的な軽やかさと耐久性の両立を追求しました。本作では、直線と緩やかな曲線を織り交ぜたプロポーションによって、端正でありながら温かみのある佇まいを実現しています。段差や陰影の出方まで計算された細部は、空間に静かな秩序をもたらします。

ウェグナーが本作で示した設計の意図は、日常使用に耐える堅牢性と、体になじむ快適性の共存です。ソリッドウッドのフレームは、人間工学的配慮に基づくわずかな傾斜とテーパーで構成され、荷重の流れを素直に受け止めます。座面は適切な通気性と保持力を両立しています。ルーズクッションの厚み配分と芯材の反発は、長時間の着座でも姿勢を保ちやすい支持感を生み、くつろぎと作業の両場面に対応します。

構造の特徴としては、ほぞ組を基本とする伝統的な木工接合を用いながら、接合部の断面設計を最小限の断面で最大の強度が得られるよう最適化している点が挙げられます。脚と座枠の取り合いは負荷方向に沿うように設計され、揺れやねじれを抑制します。フレームの見付け寸法は抑えられていますが、角部の面取りや曲線の連続性によって手触りがよく、移動時の扱いやすさにも配慮が行き届いています。

素材と加工では、ブナまたはオークのソリッド材を選択し、繊維方向に沿った削り出しや緻密なサンディングによって、触感と耐摩耗性を高めています。クッション内部にはスプリング(エペダ型)を用い、荷重を点ではなく面として受ける構造とすることで、沈み込みすぎない安定した座り心地を実現しています。張地はウールまたはアニリンレザーを想定し、素材の選択により表情とメンテナンス性のバランスを取っています。多様な空間での活用が期待されます。

デザイナーと工房の関係という観点では、ウェグナーは図面から試作、改良まで製造プロセスに継続的に関与し、ゲタマはマットレス製造で培ったクッション技術と木工の量産体制を統合して応えました。工房の特徴は、伝統的手仕事の精度を保ちながらも均質な品質を提供する生産設計にあり、GE 233はその成果が明快に示されたモデルです。

工房の移り変わりという点では、1950年代のゲタマはクッション技術を強みにソファやデイベッドの開発を加速させ、ウェグナー作品のラインアップ拡充に寄与しました。GE 233は、のちのシリーズ拡張やサイズ展開の原型となり、住宅規模や用途に応じたバリエーション設計の土台を築いています。

歴史的背景として、戦後デンマークの住宅事情では、機能性と清潔感、適切な価格帯が求められました。GE 233は、その要請に対して、無駄を削ぎ落とした構造美と実用性で応えています。曲線は人間工学的配慮によって実現されています。必要十分な要素のみで構成されたフレームと、着座時の安定を支えるクッション構成は、時代を越えて受け入れられる普遍性を備えています。

総じて、GE 233はウェグナーの設計哲学とゲタマの製造知見が高い水準で融合したモデルです。視覚的な軽さ、扱いやすい寸法、確かな支持力を兼備し、日常使いの道具としての信頼感と、家具としての静かな彫刻性を両立しています。

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