PK80 Daybed | デイベッド


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1957
Material: Stainless steel, plywood, leather or canvas
Size: W190 × D80 × H30 cm


Story

PK80 デイベッドは、1957年にポール・ケアホルムによってデザインされた作品であり、彼のミニマリズム思想を象徴する代表的な家具の一つです。ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵され、ギャラリーベンチとして採用されていることからも、その存在が単なる家具の枠を超え、建築的・文化的意義を持つことが証明されています。

このデイベッドは、ミース・ファン・デル・ローエとリリー・ライヒの1930年のカウチから影響を受けていますが、ケアホルムはそれを自身の哲学に基づいて再構築しました。サテン仕上げのステンレススチールフレームと塗装合板の台座、そして本革またはキャンバスのマットレスという極めて少ない要素で成り立っており、彼の「本質を抽出し、簡素化する」という思想が端的に表現されています。

PK80の最大の特徴は低く抑えられた座高にあり、これは空間に圧迫感を与えず、むしろ広がりを生み出します。この設計は、家具を建築空間を構成する要素として捉えたケアホルムの視点を明確に反映しています。また、ゴム製Oリングを用いたジョイント構造は、耐久性を高めながら分解やメンテナンスを容易にする画期的な技術的工夫であり、機能性と美学の両立を実現しました。

製造史においては、E. コールド・クリステンセンが最初に生産を担い、その後1982年にフリッツ・ハンセンが継承しました。これにより、PK80は世界的な流通網に乗り、現在も正規品として生産が続けられています。ヴィンテージ品、現行品、リプロダクト品が市場に存在しますが、正規品とEKC製のオリジナルは「妥協なき品質」を体現する特別な価値を持っています。

今日においても、PK80はその控えめで静謐な存在感によって、現代建築や美術館空間に違和感なく溶け込みます。単なる実用品ではなく、機能・構造・素材・空間の調和を体現する彫刻的家具として、デザイン史における普遍的な名作の地位を確立しています。

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