PK81 Square Daybed | スクエアデイベッド


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold Christensen(E. コールド・クリステンセン) / Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1959
Material: Steel, Leather, Plywood, Foam, Latex, Hairlok
Size: W140 × D140 × H30 cm


Story

PK81 Square Daybedは、ポール・ケアホルムが手掛けたデイベッドシリーズの中でも特異な存在として位置づけられます。正方形のプロポーションを持つこの作品は、単なる個人用の家具ではなく、空間を構成する「中心点」としてデザインされました。建築家グンログソンとニールセンが設計したトーンビュー市庁舎のために生まれた背景が、その公共性と建築的役割を物語っています。

ケアホルムは、自らを「家具建築家」と位置づけ、家具を単体ではなく建築空間との関係性の中で構想しました。PK81はその思想を体現する作品であり、どの方向からも座ることができる開放的な構造は、人々の交流を促す「場のデザイン」として機能します。

素材の選択にも彼の哲学が凝縮されています。マットブラッシュドスプリングスチールやステンレスフレームは、冷たい工業素材でありながらも自然な素材として再定義され、上質なレザーやプライウッドと調和しています。特にレザーは経年変化を重視して選ばれており、時間とともに美しい表情を帯び、使い手とともに成長していきます。

また、ケアホルム特有の精緻な構造美は、ジョイント部の「Oリング」に象徴されます。分解と組み立てを容易にしつつ、美しさを損なわない革新的な仕組みは、機能と美の融合を追求する彼の姿勢を示しています。

PK81は、PK80の長方形フォルムを発展させた作品でありながら、用途はより広く、パブリック空間における多目的な使い方を可能にしました。ベンチやローテーブルとしても活用できる柔軟性は、機能主義に基づきながらも生活や空間に適応するデザインの自由さを示しています。

今日においても、PK81は現行品とヴィンテージ品の両方が市場で高い評価を受けています。フリッツ・ハンセンによる現行生産は、現代的な品質保証と持続可能性を兼ね備え、一方でE. コールド・クリステンセン時代のヴィンテージ品は、ケアホルムが直接関わった真正性と物語性を持ちます。こうした二重の価値は、PK81が単なる家具ではなく、デンマークデザイン史における永続的な遺産であることを示しています。

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