A.J. Iversen | A.J.イヴェルセン


Story

A.J.イヴェルセン工房は、20世紀デンマーク家具史において「巨匠の手」と呼ばれる存在であり、精緻な職人技とデザイナーとの緊密な協働を通じて、デニッシュ・モダンの形成に決定的な役割を果たした。創設者アンドレアス・イェッペ・イヴェルセン(1888–1979)は、漁師の家庭に生まれながらも家具職人としての道を選び、コペンハーゲンに工房を設立。徹底した品質主義と、芸術的感性を持つ建築家やデザイナーとの協働姿勢によって、国内外から高い評価を受けた。

 

彼の工房は、単なる製作所ではなく、文化的・社会的影響力を備えた機関であった。1930年代から1960年代にかけて、コペンハーゲン家具職人ギルド展における主要な出展者として数々の革新的な作品を発表。特にオーレ・ヴァンシャーとの長期にわたる協働は、歴史的意匠をモダンな感性で再構築するデザイン哲学を体現し、イヴェルセン工房の象徴的成果となった。

 

使用された素材はマホガニーやローズウッドなどの銘木であり、構造の正確さと仕上げの美しさは他に類を見ない水準に達していた。さらに、工房は見習い教育の支援やギルド運営にも積極的に関与し、デンマーク家具職人全体の地位向上に寄与した。工房は1985年に幕を閉じたが、その遺産は今日もオークション市場や美術館コレクションにおいて高く評価され続けている。

 


About

Year:1916–1985
President:Andreas Jeppe Iversen、Gunnar Iversen
Designer:Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)、Flemming Lassen(フレミング・ラッセン)、Mogens Lassen(モーエンス・ラッセン)、Kai Gottlob(カイ・ゴットロープ)、Viggo Boesen(ヴィゴ・ボーセン)
Place:コペンハーゲン


History

1888 アンドレアス・イェッペ・イヴェルセン、ソンダー・ビャートに誕生
1906 コリングのA.L. Johansen & Søn家具工場で見習いを開始
1909 職人見習いの卒業制作で銀メダルを受賞
1916 コペンハーゲンにA.J.イヴェルセン工房を設立
1925 パリ万国博覧会に出展し、名誉賞を受賞(カイ・ゴットロープ設計家具を製作)
1927 コペンハーゲン家具職人ギルド展に初参加
1930 家具職人ギルド展の委員長に就任(~1934)
1935 フレミング・ラッセン「フッサール」イージーチェアを発表
1937 カイ・ゴットロープのソファを製作・出展
1940 モーエンス・ラッセン「エジプシャン・コーヒーテーブル」を製作
1941 工房設立25周年を記念する出版物を刊行
1949 オーレ・ヴァンシャーのアームチェアセットを発表
1950 息子グンナー・イヴェルセンが共同経営者となる
1951 コペンハーゲン家具職人ギルド会長に就任(~1961)
1954 オスロ家具職人ギルドより「金の鉋賞」を受賞
1957 オーレ・ヴァンシャー「エジプシャン・スツール」を製作・発表
1958 オーレ・ヴァンシャー「J2883 アームチェア」を製作
1959 オーレ・ヴァンシャーのマホガニーデスクを製作
1960 オーレ・ヴァンシャー3人掛けソファを製作
1961 オーレ・ヴァンシャー晩年のアームチェアを製作
1968 デンマーク工芸評議会より功労金メダルを受賞
1979 創設者アンドレアス・イェッペ・イヴェルセン逝去
1985 A.J.イヴェルセン工房閉鎖


Furniture

・Egyptian Stool
・T Chair
・Dining Chair(格子背もたれ)
・Three-seater Sofa
・Mahogany Desk
・Easy Chair “Husar”
・Egyptian Coffee Table
・Armchair J2883
・Sideboard
・Cabinet
・Conference Table
・Writing Desk


Imprint/Label

「Snedkermester A.J. Iversen København」と記された紙ラベルが多くの作品に貼付される

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