Svante Skogh | スヴァンテ・スコーグ


Story

スヴァンテ・スコーグは、1950年代から1960年代にかけて活躍したスウェーデンの家具デザイナーです。彼は素材の特性を丁寧に読み解き、機能性とエレガンスを同時に満たす造形を追求しました。無垢材の量感や木目の表情、そこに真鍮や上質な張地を合わせることで生まれる静かな高級感が、彼の作品の核にあります。

スコーグはストックホルムのコンストファックで教育を受け、クラフトと産業生産の橋渡しを担う実務的な視点を備えていました。直線的で構造を見せる造形と言葉のように滑らかな曲線的フォルムという二つの語法を自在に使い分け、用途・素材・製造技術に応じて最適解を選ぶ姿勢が特徴です。

代表作の「Bodö」シリーズは、オークの力強いフレームと露出したストラップ構造により、北欧モダンの実直さを明快に提示しました。一方で「Pallas」では、シェル状のボディを木製フレームが抱く彫刻的構造を採り、軽快な浮遊感を実現しています。相反する語法を自在に操る柔軟さは、成熟したデザイナーとしての器量を物語ります。

彼の作品はしばしばデニッシュ・モダンと混同されますが、その根にはスウェーデンの「フォルクヘム(国民の家)」の理念に根差した、日常に開かれた品質の追求があります。高級感と実用性を両立させる設計思想は、スウェーデン・モダニズムの特質を鮮やかに体現しています。

生前は過度に喧伝されることのない実務派でしたが、近年は体系的な再評価が進み、シリーズの広がりとメーカー協業の幅広さが見直されています。産業とクラフトの接点で働いた「静かなる巨匠」として、今日も確かな存在感を放ち続けています。


About

Year:1908–1988
Place:Stockholm(ストックホルム)
Manufacturer:Säffle Möbelfabrik(セーフレ・モベルファブリック)、Asko(アスコ)、OPE Möbler(オーペ・モブラー)、AB Förenade Möbelfabrikerna Linköping(リンシェーピング合同モベーファブリケルナ)、Abrahamssons Möbelfabrik AB(アブラハムソンズ・モベルファブリック)、Laauser(ラウザー)、AB Klings Alingsås(クリングス・アーリングソース)、AB Möbelfabriken Balder(モベルファブリケン・バルダー)


History

1950:自由曲線の天板をもつコーヒーテーブルの試作を開始し、後年の「Boomerang」系へ展開。
1951:コンストファックでの学びを基盤に、量産と意匠の両立を志向した設計活動を本格化。
1952:スウェーデン国内メーカーとの協業を拡大し、家庭用の実用家具ラインを整備。
1953:AB Klings Alingsåsで「Chile」シリーズ(ソファ/アームチェア)を発表。
1953:構造を見せる直線的デザイン言語の確立に着手。
1954:Askoのために「Pallas」ラウンジチェア/ソファを発表。彫刻的構造で評価を得る。
1954:OPE Möbler向けにModel 755/775系ラウンジチェアをデザイン。
1955:張りぐるみタイプと木フレームタイプの二系統を併走させ、用途別に最適化。
1956:Säffle Möbelfabrikにてローズウッドと真鍮を生かした収納・テーブル群の開発を開始。
1956:家庭の中心としてのダイニング空間に焦点を置き、拡張式テーブルの設計を推進。
1957:「Bodö」シリーズをSäffle Möbelfabrikで発表。露出ストラップとオーク無垢の構成が話題に。
1957:Abrahamssons Möbelfabrik ABで「Rosetto」ダイニング・シリーズを展開。
1958:真鍮の金具や化粧板の木目合わせなど、細部の仕上げ品質を体系化。
1959:収納家具におけるブックマッチの表現を深化させ、前面意匠の統一感を追求。
1960:直線的構造美と有機的曲線美の二軸を明確化し、シリーズ設計へ水平展開。
1961:Säffle Möbelfabrikで大型サイドボード「Cortina」を量産レンジに投入。
1962:張地にウール、フレームにチークやオークを採用したラウンジ群を刷新。
1963:AB Förenade Möbelfabrikerna Linköping向けのアームチェアを追加し、公共施設向け需要にも対応。
1964:Laauserとテーブル分野で協業し、自由曲線天板の意匠性を強化。
1965:AB Möbelfabriken Balderのためにワークデスク系の設計を実施。
1966:シリーズの意匠統一を図り、脚部・取っ手のモジュール化を進める。
1967:住宅事情の変化に合わせ、コンパクトな収納ユニットを提案。
1968:曲線的張りぐるみソファの快適性を改良し、内部構造の耐久性を高める。
1969:北欧域内の協業ネットワークを再整理し、安定供給体制を整備。
1970:過去のシリーズを改訂し、仕上げバリエーション(材・張地)を拡張。
以降:主要シリーズの継続供給と改良を重ね、実務派デザイナーとして評価を確立。


Furniture

・Bodö Armchair | ボードー アームチェア
・Bodö Sofa | ボードー ソファ
・Cortina Sideboard | コルティナ サイドボード
・Cortina Dining Table | コルティナ ダイニングテーブル
・Cortina Coffee Table | コルティナ コーヒーテーブル
・Pallas Lounge Chair | パラス ラウンジチェア
・Pallas Sofa | パラス ソファ
・Model 755 Lounge Chair | モデル 755 ラウンジチェア
・Model 775 Lounge Chair | モデル 775 ラウンジチェア
・Rosetto Dining Chair | ロゼット ダイニングチェア
・Rosetto Dining Table | ロゼット ダイニングテーブル
・Chile Armchair | チリ アームチェア
・Chile Sofa | チリ ソファ
・Boomerang Coffee Table | ブーメラン コーヒーテーブル
・Extension Dining Table | エクステンション ダイニングテーブル
・Highboard Cabinet | ハイボード キャビネット
・Lowboard Cabinet | ローボード キャビネット
・Hutch Cabinet | ハッチ キャビネット
・Desk | デスク
・Upholstered Sofa | 張りぐるみ ソファ
・Occasional Chair | オケージョナル チェア
・Lounge Ottoman | ラウンジ オットマン

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