Story
アルネ・ノレルは、スウェーデンを代表する家具デザイナーであり、北欧デザイン史において独自の存在感を放っています。彼のデザイン哲学は「快適性」と「構造的誠実さ」に基づき、家具を単なる装飾的なオブジェクトではなく、人間が日常で使う道具として捉えた点に特徴があります。ノレルは革や木材といった素材の特性を隠すのではなく、むしろ積極的に見せることで、家具がどのように成り立っているかを誠実に伝えるアプローチをとりました。
彼のキャリアはストックホルムで始まりましたが、1958年にスモーランド地方に拠点を移し、自然豊かな環境と密接に結びついた製造拠点を築きました。この移転は彼のデザイン哲学を深める決定的な要因となり、地域に根差したクラフトマンシップを軸にしたブランド「Norell Möbel AB」を設立する契機となりました。
ノレルの代表作「Ari」チェアは、彼の死後に高い評価を受けた作品として知られています。1973年に英国家具製造者協会の「Showpiece of the Year」を受賞し、彼の名を国際的に広めるきっかけとなりました。構造を露わにしながらも快適性を損なわないデザインは、世界中でデザインアイコンとして受け継がれています。
彼はまた、デンマークのコーア・クリントらから影響を受け、クラシカルなサファリチェアを現代的に再解釈した「Sirocco」チェアを生み出しました。デンマークデザインとの深い親和性は、彼がスウェーデン人であるにもかかわらず、しばしばデンマークデザイナーと誤認される要因にもなっています。
現在もなお、Norell Möbel ABはスモーランドに拠点を置き、家族経営のもとでノレルのオリジナルデザインを忠実に製造し続けています。この姿勢は単なる伝統維持にとどまらず、彼の哲学を現代に生かす営みであり、スカンジナビアデザインの中で揺るぎない地位を確立する基盤となっています。
About
Year:1917–1971
Place:Östersund(エステルスンド)
Manufacturer:Norell Möbel AB(ノレル・モーベルAB)
History
1917:スウェーデン北部オーセレに生まれる
1940年代:デザイン教育を受け、ストックホルムで活動を始める
1954:ストックホルム郊外ソルナに自身の工房を開設
1958:スモーランド地方アネビーに移り、Møbel AB Arne Norellを設立
1960:初期作品のソファやラウンジチェアを発表
1962:モジュラー型ソファを発表し注目を集める
1964:「Sirocco」サファリチェアを発表
1965:「Inca」チェアを発表
1966:「Ari」ラウンジチェアをデザイン
1968:「Kontiki」シリーズを発表
1970:「Mexico」ソファを発表
1971:死去、未発表デザインが多数残される
1973:「Ari」チェアが英国家具製造者協会より「Showpiece of the Year」を受賞
1975:映画作品に家具が登場し国際的注目を集める
1980年代:Norell Möbel ABが存続し、オリジナルデザインを継続生産
1993:娘マリー・ノレル=メラーと夫トーマス・メラーが経営を引き継ぐ
2000年代:ノレルの作品が再評価され、オークションで高値を記録
2010年代:「Ari」「Sirocco」が国際的にコレクターズアイテムとして再評価
2020年代:Norell Möbel ABが現存し、オリジナルデザインをスウェーデンで生産
Furniture
・Ari Chair | アリチェア
・Sirocco Safari Chair | シロッコ サファリチェア
・Inca Chair | インカチェア
・Ilona Sofa | イロナソファ
・Kontiki Sofa | コンティキソファ
・Indra Sofa | インドラソファ
・Jupiter Sofa | ジュピターソファ
・Ariet Chair | アリエットチェア
・Pilot Chair | パイロットチェア
・Mexico Sofa | メキシコソファ
・Paris Chair | パリチェア
・Leo Armchair | レオアームチェア
・Safari Chair | サファリチェア(再解釈版)
・Cato Sofa | カトソファ
・Ribot Chair | リボットチェア
・Mira Sofa | ミラソファ
・Torneo Armchair | トルネオアームチェア
・Lido Sofa | リドソファ
・Cuba Sofa | キューバソファ
・Sparta Armchair | スパルタアームチェア