Story
ソーレン・ホーン工房は、20世紀半ばのデンマーク・モダンデザインにおいて、極めて重要な役割を果たしました。ホーンはデザイナーではなく、卓越したマスターキャビネットメーカーとして、数々の巨匠の構想を具体的な家具へと昇華させました。彼の工房は、1950年代から1960年代を中心に活動し、コペンハーゲン家具職人ギルド展にも参加するなど、デンマーク家具界の最前線で存在感を放っていました。
彼の家具には工房独自の焼印が押されており、それは品質と真正性を保証する「職人の署名」として、今日のヴィンテージ市場でも高く評価されています。また、ホーンは若手職人の育成にも力を入れ、彼の弟子であるニールス・ロス・アナセンを通じて、その技術と精神は後世へと受け継がれました。
フィン・ユールのNo.45イージーチェアやNo.48セティ、ヘルゲ・ヴェスタゴー・イェンセンのラケットチェア、イブ・ハイランダーのデイベッドなど、数多くの象徴的作品を製作した実績は、ホーン工房の技術力と信頼性を裏付けています。これらの家具に共通するのは、素材への深い理解、正直で緻密な構造、そして時代を超越するエレガンスです。
このようにソーレン・ホーン工房は、デザイン史における「沈黙の巨匠」として、デンマーク・モダンの発展に欠かせない基盤を築きました。その遺産は、家具そのものに刻まれた技術と焼印を通じて、今なお語り継がれています。
About
Year:1950年代~1980年代
President:Søren Horn
Designer:Finn Juhl(フィン・ユール)、Helge Vestergaard-Jensen(ヘルゲ・ヴェスタゴー・イェンセン)、Ib Hylander(イブ・ハイランダー)、Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)ほか
Place:コペンハーゲン
History
1945:フィン・ユール No.45 イージーチェアの製作に関与
1948:フィン・ユール No.48 セティを製作
1950:コペンハーゲン家具職人ギルド展に参加し、工房の存在を広く知らしめる
1951:ピーター・ヴィッツ&オーラ・ミュルゴーのデスクを製作
1953:工房の家具に独自の焼印を導入、真正性の証として機能
1955:クヌート・モーテンセンの伸長式ダイニングテーブルを製作
1956:イブ・ハイランダーの伸長式デイベッドを製作、家具職人ギルド展に出展
1957:ディッテ&エイドリアン・ヒースのチェアを製作
1958:ローズウッドを用いた高級サイドボードを製作
1960:工房がグレーテ・ヤルクのデスクを製作
1961:Model 143 ダイニングチェアを製作、ヒース夫妻の代表作に貢献
1963:ヘルゲ・ヴェスタゴー・イェンセンとの協業が本格化
1965:ラケットチェアを製作、彫刻的デザインで高評価を得る
1966:マホガニー材を用いたロッキングチェアを製作
1967:タイル天板のコーヒーテーブルを製作、素材の組み合わせの妙を示す
1968:ヴェスタゴー・イェンセンの家具製作において独占的な地位を確立
1970:工房がピークを迎え、幅広いデザイナー作品を手掛ける
1975:工房出身の弟子ニールス・ロス・アナセンが独立
1980:ヴィンテージ市場において「Søren Horn」の焼印が価値の基準となる
1989:フィン・ユール未亡人の依頼で、アナセンがチーフテンチェアを製作、「SH/NRA」の刻印が登場
Furniture
・No.45 Easy Chair | イージーチェア
・No.48 Settee | セティ
・Racket Chair | ラケットチェア
・Extending Daybed
・Model 143 Dining Chair
・Rocking Chair
・Sideboard
・Desk
・Extending Dining Table