Story
Thorald Madsen Snedkeriは、デンマーク・モダン黄金期における重要なキャビネットメーカーのひとつであり、職人技とデザイナーとの協働によってデザイン史に足跡を残しました。工房はコペンハーゲンに拠点を置き、1930年代から1960年代にかけて活発に活動しました。その作品は、精緻な木工技術と素材の美を最大限に引き出す巧みさを特徴としています。
Thorald Madsenは、単なる製造者ではなく、革新的なデザインを具現化するパートナーとして機能しました。とりわけ、トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン夫妻との長年の協働関係は、洗練された家具の数々を生み出し、デンマーク・モダンの象徴的な存在となりました。また、1952年のコペンハーゲン・キャビネットメーカーズ・ギルド展では、ポール・ケアホルムとヨーエン・ホイが手がけた実験的な「トレスルチェア」を製作し、革新性を世に示しました。
このように、工房は伝統的な職人技を守りながらも、前衛的な試みに挑戦する柔軟性を持ち合わせていました。素材にはチークやローズウッド、オークなどの銘木を用い、レザーや籐(ラタン)、さらにはフラッグハリヤードといった異素材も積極的に取り入れました。接合部には高精度の蟻組接ぎを施すなど、細部へのこだわりは工房の品質を裏打ちしています。
Thorald Madsen Snedkeriは、デンマークのデザイン史において「ビジョンを形にする工房」として位置づけられ、今日も高い評価を受け続けています。その遺産は、デザインとクラフトマンシップの結節点に立つ存在として、普遍的な価値を持ち続けています。
About
Year:1930年代〜1960年代
President:Thorald Madsen
Designer:Tove & Edvard Kindt-Larsen(トーヴェ&エドヴァルド・キント・ラーセン)、Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)、Jørgen Høj(ヨーエン・ホイ)、Mogens Lassen(モーエンス・ラッセン)、Flemming Lassen(フレミング・ラッセン)、Grete Jalk(グレーテ・ヤルク)
Place:Copenhagen(コペンハーゲン)
History
1930年代:Thorald Madsenがコペンハーゲンに工房を設立
1937:Flemming Lassenデザインのシープスキンアームチェアを製作
1940年代:各種キャビネットやチェストを制作し活動を拡大
1951:Jørgen Højデザインのチークとラタンのダイニングチェアをギルド展に出品
1952:Poul Kjærholm & Jørgen Højの「トレスルチェア(JH 106)」を製作し出品
1956:Tove & Edvard Kindt-Larsenデザインのソファをギルド展に出品
1957:キント・ラーセン夫妻デザインの回転スツールを製作
1959:キント・ラーセン夫妻デザインのソファを出品
1960:キント・ラーセン夫妻デザインのブラジリアンローズウッド製ダイニングチェアセットを製作し出品
1960年代:Grete Jalkデザインのサイドテーブルを製作
1960年代:工房活動を縮小し、徐々に幕を閉じる
Furniture
・Dining Chair Jørgen Høj 1951 | ダイニングチェア
・Trestle Chair JH-106 Poul Kjærholm & Jørgen Høj 1952 | トレスルチェア
・Sofa Tove & Edvard Kindt-Larsen 1956 | ソファ
・Swivel Stool Tove & Edvard Kindt-Larsen 1957 | スツール
・Dining Chair set Tove & Edvard Kindt-Larsen 1960 | ダイニングチェア
・Side Table Grete Jalk 1960s | サイドテーブル
・Armchair Flemming Lassen 1937 | アームチェア