Story
Vatne Møbler(ヴァトネ・モブラー)は、ノルウェーを代表する家具メーカーとして、スカンジナビアデザインの歴史において独自の足跡を残しました。しばしばデンマークの工房と誤解されますが、同社はノルウェー西部のヴァトネ村に1946年に設立された企業です。その発展の歴史は、二つの大きな時代に分けられます。
第一の時代は、建築家出身の創業者クヌート・セーターによる設立期であり、空間を重視した建築的視点とクラフトマンシップが融合した家具を生み出しました。続く時代は、デザイナーのフレドリック・A・カイザーが主導したクラフトとエレガンスの時代です。カイザーは「Model 711」チェアなどの傑作を設計し、国際的評価を確立しました。
そして1968年以降、シガード・レッセルがチーフデザイナーとなり、工業化と大量生産を志向する新たな時代が幕を開けます。レッセルが設計した「Falcon Chair」は、ノルウェーデザインを世界市場に押し上げる象徴的なアイコンとなり、Vatne Møblerを一躍国際的なブランドへと導きました。
その後、1980年代の市場変化を経てStokkeグループへの売却、Fora Formへの統合、2000年代の創業家による復興の試みなどを経験し、現在はLK HjelleがFalcon ChairやModel 711を正規生産しています。Vatne Møblerの歴史は、ノルウェーモダンデザインの力強さと、クラフトから工業化への移行を象徴する物語です。
About
Year:1946–1989 / 2002–2008(再興)
President:Knut Sæter、Per Arne Sæter
Designer:Fredrik A. Kayser(フレドリック・A・カイザー)、Sigurd Resell(シガード・レッセル)、Gerhard Berg(ゲルハルト・ベルグ)、Olav Eldøy(オーラヴ・エルドイ)
Place:ヴァトネ(ノルウェー)
History
1946:Knut SæterがVatne Lenestolfabrikkをヴァトネ村に設立
1947:弟Jostein Sæterが販売部門を担当し、事業基盤を拡大
1955:Gerhard Bergと協働し「Varia」ソファを発表
1955:Torsten Johanssonが「Model 220」チェアをデザイン
1950年代後半:Fredrik A. Kayserが参加、デザイン哲学を刷新
1960:「Model 711」チェアがデザイン賞を受賞
1960年代:カイザーによる「965」シリーズや「Nøtteknekkeren」ロッキングチェアを発表
1968:Fredrik A. Kayserが逝去、Sigurd Resellがチーフデザイナーに就任
1970:「Blankvals」チェアがコンペで入賞
1971:「Falcon Chair」として商品化、国際市場で大成功を収める
1974:Falconのフレームをクロームスチールから積層合板に改良
1970年代後半:Falconシリーズを拡充、オットマンやコーヒーテーブルも追加
1980年代:Olav Eldøyらによるポストモダン的デザインを導入
1989:財政難によりStokkeグループに売却
1992:StokkeがMøremøblerを買収し、Fora Formに統合
2002:Per Arne Sæterが家業再興を試み、カイザー作品を復刻
2008:金融危機により生産停止
2010:創業家が再度の復興を模索するも限定的な展開にとどまる
2025:LK HjelleがFalcon ChairとModel 711の正規生産を継承
Furniture
・Model 220 Chair
・Varia Sofa
・Model 711 Chair
・Model 710 Chair
・Model 599 Rocking Chair “Nøtteknekkeren”
・Model 965 Sofa Series
・Model 108 Chair
・Model 109 Chair
・Model 860/861 Lounge Series
・Falcon Chair
・Falcon Ottoman
・Falcon Coffee Table
・Model 980 Sofa
・Model 121 Chair