FJ-3800 Grasshopper Chair | グラスホッパー・チェア


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Niels Vodder(ニールス・ヴォッダー) / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィン・ユール)
Year: 1938
Material: Oak, Walnut, Textile, Leather
Size: W87 × D101 × H93 cm / SH34 cm


Story

グラスホッパー・チェアは、フィン・ユールが1938年に初めて世に送り出したラウンジチェアであり、彼のキャリアの幕開けを象徴する作品です。当時のデンマーク家具界においては、機能主義を重視した堅実で保守的なデザインが主流でしたが、ユールは建築的かつ彫刻的な視点を家具に持ち込み、この椅子でその革新性を強烈に示しました。

1938年のコペンハーゲン家具職人ギルド展で、ニールス・ヴォッダーの工房から発表されたグラスホッパー・チェアは、従来の重厚な家具と一線を画し、動物的で躍動感のあるフォルムを提示しました。脚部が後方へとしなやかに伸びる姿はまるでバッタの跳躍を思わせ、名の由来ともなりました。しかしその前衛的な姿は当時の観衆に理解されず、商業的成功には至りませんでした。ユールは協力者ヴォッダーの損失を補うため、わずかに製作された2脚を自ら買い取り、その後この椅子は人前から姿を消します。

以後80年近くもの間、グラスホッパー・チェアは「幻の椅子」として伝説的存在となります。その流れが変わったのは2018年、現存する1脚がパリのオークションに出品され、約3,800万円という高額で落札された時でした。この機会を逃さず、House of Finn Juhlはオリジナルの採寸を行い、翌2019年に正確な復刻を実現します。

復刻版の製作はデンマーク国内で行われ、伝統的な職人技を尊重しながら、張り地や仕上げに至るまで一脚ずつ丁寧に仕上げられています。各製品にはシリアルナンバーが付与され、単なる再生産ではなく歴史的遺産の継承としての意味を持っています。

今日、グラスホッパー・チェアはフィン・ユールのデザイン哲学の出発点を示す重要な証として、そして芸術とクラフトマンシップの融合が生んだ永遠の傑作として、世界中のコレクターや愛好家を魅了し続けています。

 

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