Dining Chair | ダイニングチェア


About

Designer: Ole Wanscher(オーレ・ヴァンシャー)
Manufacturer: A.J. Iversen(A.J.イヴァーセン)
Year: 1950
Material: Mahogany, Leather


Story

本作は、建築的な思考と精緻な木工技術が交差する地点で生まれたダイニングチェアです。外観は細身で静かな佇まいながら、主要部材の断面設定と接合がよく計算され、軽やかさと強度の両立を意図しています。日々の使用に耐える剛性を確保しつつ、動作時の抵抗が少ないしなやかさを備えています。

背もたれは横桟と縦材の構成により、視覚的な秩序と支持性を同時に成立させています。緩やかなカーブは背骨のラインを意識して設計され、体圧を分散します。座面は下地構成を工夫し、適切な保持力と通気性を両立させています。

構造の核となるのは精確なほぞ組みです。脚と貫の取り合いは二方向荷重を想定し、割れや緩みを抑える逃げ寸法が配慮されています。背枠の端部は薄く処理して見付けを絞り、中央部に必要な肉厚を残すことで、軽快な印象と曲げ強度を両立しています。

素材はきめの細かいマホガニーが選定されています。繊維方向に沿った加工と丁寧な刃物取りにより、面の連続性が保たれ、触れたときの一体感が得られます。革張りは層構成を工夫し、体に馴染む穏やかな沈み込みを目指しています。

デザイナーと工房の協働体制も本作の質を支えています。図面段階の意匠意図が製作工程と矛盾しないよう調整され、選木から仕上げまで一貫した管理が行われました。意匠要素がそのまま強度要素となる設計は、デンマーク・モダン期に確立された協働モデルの好例であり、今日まで通用する普遍性を示しています。

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