MK50 Wingback Chair | ウィングバックチェア


About

Designer: Mogens Koch(モーエンス・コッホ)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)Ivan Schlechter(イヴァン・シュレクター)
Year: 1936
Material: Mahogany, leather
Size: W 69 × D 104 × H 108 × SH 44 cm


Story

MK50は、伝統的なウィングバックの骨格を明快に可視化する設計です。張り地で覆い隠さず、ソリッドなマホガニーのフレームを意図的に見せることで、構造線と量塊の関係が読み取りやすく設計されています。オットマンは折りたたみ式クッションによってチェアと連続させる前提で設計され、シェーズロングの姿勢までを一体で担保します。曲線は人間工学的配慮によって実現されています。

張りは厚みのあるレザーを用い、革で包んだ鋲で丁寧に固定します。マホガニーは比重と剛性のバランスに優れ、精密なほぞや面取りを施すことで、視覚的な軽さと構造安定性を同時に実現します。座面は適切な通気性と保持力を両立しています。

本作はコーレ・クリントの分析的手法を継承した機能主義の系譜上にあり、18世紀英国椅子の型を現代の生活尺度へ再解釈した位置づけです。製作は精緻な木工を得意とする工房と、高度な張り加工を担う専門職人の協働体制で進められました。木工フレームと張り工程の役割分担が、露出フレームと張りのコントラストをいっそう鮮明にしています。

着座時は高めの背と翼が頭部周辺の微気流を受け止め、肩口までのサポートが自然に得られます。オットマン連結時は下肢の支持線が伸び、長時間でも姿勢変化が取りやすい設計です。多様な空間での活用が期待されます。

シェーズロングへ滑らかに移行できるオットマン機構は、ひとつのセットで読書から休息までを完結させるという機能主義的要請への明快な解答です。可視化されたフレーム、静謐な張り、そして用途転換の仕組みが相互に補完し合い、普遍性の高い一脚を形成しています。

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