NV-51 Delegate Chair | デレゲート・チェア


About

Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Niels Vodder(ニールス・ヴォッダー) / Baker Furniture(ベイカー・ファニチャー) / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィン・ユール)
Year: 1951
Material: Teak, Brazilian Rosewood, Walnut, Leather, Wool
Size: W64 × D65.5 × H85.5 / SH45 cm


Story

NV-51チェア、通称「デレゲート・チェア」は、フィン・ユールが1951年にデザインし、国際外交の舞台に登場した特別な椅子です。ニューヨークの国連本部信託統治理事会会議場のために制作され、デンマーク政府が寄贈したこの空間は、まさに文化外交の象徴でした。フィン・ユールは建築、家具、照明、テキスタイルを総合的に統一する「総合芸術」の理念を追求し、国際社会にデンマークの美学と誠実なクラフトマンシップを示しました。

この椅子は、彼のデザイン哲学である「支える要素と支えられる要素」を体現しています。座面と背もたれがフレームから浮いているように見える構造は、視覚的な軽やかさと優雅さを演出し、同時に力強さと安定感を兼ね備えています。硬材から削り出された流麗なフレームは、ニールス・ヴォッダーの卓越した木工技術なくしては実現できませんでした。まるで彫刻のように仕上げられたその姿は、家具を超えた芸術作品といえるでしょう。

1950年代にはアメリカのベイカー・ファニチャーがライセンス生産を行い、ウォールナット材や籐張りなど、素材や仕様に多様なバリエーションが広がりました。さらに2013年、国連会議場の全面改修に際し、ハウス・オブ・フィン・ユールがオリジナルに忠実な復刻版を製作。アメリカンウォールナットと青いウール張りで仕上げられた椅子は、再び国際的な舞台に姿を現しました。

この作品は、フィン・ユールの他の代表作、No.45チェアやチーフテンチェアとも深く結びついています。No.45チェアが示した「浮遊感」の美学をよりフォーマルに昇華させ、チーフテンチェアの彫刻的な存在感と同時代に制作されながらも、外交の場にふさわしい端正さを備えていました。その静謐で威厳ある佇まいは、国際社会におけるデンマークデザインの象徴として揺るぎない地位を確立しています。

現代に至るまで、NV-51チェアは単なる会議用の椅子にとどまらず、芸術、デザイン、外交の交差点に存在する不朽のアイコンとして評価され続けています。その遺産は今日もなお継承され、デンマークモダンの精神を体現する椅子として、未来に語り継がれていくのです。

 

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