4488 English Chair | ベルジェールチェア


About

Designer: Kaare Klint(カーレ・クリント)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルド・ラスムッセン)
Year: 1931
Material: Mahogany, Brazilian rosewood (inlay), Cane, Leather


Story

モデル4488は、古典的なアームチェアの比例と座位寸法を、計測学に基づく設計へと置き換えることで再構成した一脚です。直線と緩やかな曲線の関係性は構造の必然をそのまま見せ、脚先の「靴」意匠や控えめなモールディングが全体の安定感を整えます。曲線は人間工学的配慮によって実現されています。

フレームにはマホガニーを用い、要所にブラジリアンローズウッドの象嵌を配することで、視覚的な輪郭が引き締まります。側板から背にかけての籐張りは、軽さと耐久性を両立し、面全体の張力を均等に分散させます。座面は適切な通気性と保持力を両立しています。レザーのクッションは座骨点を安定させ、肘と背の高さ関係が自然な姿勢へ導きます。

製造はコペンハーゲンの工房によって行われ、緻密な木取りと確実な接合で、寸法体系に忠実なフレームを実現しています。設計者と工房の連携は、図面精度と手加工を往復させるデンマークの製造文化を反映し、部材断面や留めの処理に至るまで一貫した考え方が貫かれています。

本作の背景には、十八世紀英国椅子の研究と再解釈がありますが、目的は歴史様式の再現ではなく、現代の生活に適合する機能の更新です。肘先の幅や背もたれの角度は動作を阻害せず、出入りや立ち上がりが滑らかです。多様な空間での活用が期待されます。

着座感は静かで端正です。籐の弾性とクッションの支持が適度な沈み込みを生み、長時間の読書や会話でも姿勢変化に素直に追随します。装飾は抑制的でありながら、素材の質感と比例の整合が、日常の使用においても品位を感じさせる椅子です。

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