About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1950
Material: Oak, Walnut, Ash, Paper cord
Size: W59 × D51 × H79 cm / SH45 cm
Story
CH26チェアは、1950年にハンス・J・ウェグナーがカール・ハンセン&サンのためにデザインした作品のひとつであり、同年に発表されたCH22、CH23、CH24(Yチェア)、CH25と並ぶ重要なシリーズの一員です。しかし、他の兄弟モデルと異なり、当時は量産されることがなく、長らく図面上の存在にとどまりました。そのため「知られざる名作」として存在し続け、2016年の復刻まで世に出ることはありませんでした。
ウェグナーがこの椅子で追求したのは、ラウンジチェアのような快適性を備えたダイニングチェアという新しい提案でした。CH22ラウンジチェアを基盤としながら、よりコンパクトで直立したプロポーションに置き換えることで、ダイニングシーンに適合する形を生み出したのです。アームレストを備え、長時間の会話や食事にふさわしい快適さを提供するという点で、当時の市場にはあまり存在しなかったタイプのチェアでした。
デザインの特徴は、背中に沿うように緩やかにカーブした背板と、アームから後脚へと連続する滑らかな構造にあります。フレームにはオークやウォールナットなどの無垢材が用いられ、座面は熟練した職人によって手織りされたペーパーコードで仕上げられています。堅牢でありながら軽やかさを感じさせる構造は、視覚的にも触覚的にも心地よい体験を与えます。
2016年、カール・ハンセン&サンはウェグナーのオリジナル図面をもとにCH26を復刻しました。長年眠っていた設計が現代に甦ったことで、シリーズ全体の文脈が補完されると同時に、ウェグナーの創造性の幅広さが改めて証明されました。この復刻は、Yチェアのような普遍的アイコンに隠れていた名作を再評価する契機となり、今日では「もうひとつのクラシック」としてインテリアに取り入れられています。
CH26は、ウェグナーの哲学である「シンプルさ」「有機的なフォルム」「素材への誠実さ」を忠実に体現し、70年以上経った今もその魅力を失っていません。普遍的な美しさと人間工学に基づいた快適性を兼ね備えたこの椅子は、デンマークモダンデザインの精神を体現する傑作として、今後も語り継がれていく存在です。