France & Daverkosen | フランス&ダヴァーコーセン


Story

France & Daverkosenは、20世紀半ばのデンマーク家具産業を牽引した工房であり、後にFrance & Søn、さらにCADOへと発展しました。この歩みは、伝統的なクラフトと近代的な工業生産、そしてデンマーク国内から国際市場への拡大というダイナミズムを体現しています。

創業は1936年に遡り、英国人実業家チャールズ・W・F・フランスと、家具職人エリック・ダヴァーコーセンの協力によって始まりました。当初はマットレスの製造を行っていましたが、戦後の需要拡大とともに家具製造へと大きく舵を切り、産業規模の家具生産を担う重要な存在となっていきます。

同社が確立した最大の革新は、チーク材を用いた工業的家具製造と、ノックダウン(分解式)方式の導入です。特にフィン・ユールがデザインした「スペードチェア(Model 133)」は、世界初のチーク材量産家具として歴史的な意義を持ちます。これにより、デンマーク・モダンを象徴する素材であったチーク材が世界市場に広まり、国際的な家具デザインの潮流を決定づけました。

1950年代から60年代にかけて、France & Søn(改称後)はフィン・ユール、オーレ・ヴァンシャー、ピーター・ヴィッツ&オーラ・モルガード=ニールセン、グレーテ・ヤルク、アルネ・ヴォッダーといった名だたるデザイナーと協業しました。その製品群は、輸出を通じてアメリカやドイツ、イギリス市場に広く浸透し、1954年にはデンマーク家具輸出全体の約60%を占めるまでに成長しました。

その後、ポール・カドヴィウスによる買収を経てCADOとなり、さらに前衛的なデザインを導入しました。事業としては1970年代後半に幕を閉じましたが、France & DaverkosenからCADOまでの40年間の歴史は、デンマーク家具の黄金期と変遷を凝縮した物語です。今日でもその家具は、革新性と品質を兼ね備えたヴィンテージとして高い評価を受け続けています。


About

Year:1936 – 1970年代後半
President:Charles W. F. France、James France
Designer:Finn Juhl、Ole Wanscher、Grete Jalk、Arne Vodder、Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen、Poul Cadovius
Place:ヒレロッド


History

1936:チャールズ・W・F・フランスとエリック・ダヴァーコーセンがマットレス製造会社を設立
1937:共同創業者エリック・ダヴァーコーセンが急逝、フランスが事業を継続
1940:第二次世界大戦下、チャールズ・フランスがドイツの収容所に抑留される
1945:戦後に解放され、家具製造のアイデアを携えてデンマークに帰還
1948:事業をマットレスから家具製造へと転換、France & Daverkosenの家具メーカーとしての再出発
1950:初期のチーク材を用いた家具を発表し、輸出を開始
1952:ヒレロッドに近代的な工場を建設、工業規模での家具生産体制を確立
1953:フィン・ユールと協業し、スペードチェア Model 133 を発表
1954:デンマーク家具輸出の約60%を同社が担う規模に成長
1955:アメリカ市場への輸出が拡大し、John Stuart Inc.を通じた販売が始まる
1956:ピーター・ヴィッツ&オーラ・モルガード=ニールセンがミネルヴァシリーズをデザイン
1957:社名をFrance & Sønに変更、ジェームス・フランスが経営参加
1958:オーレ・ヴァンシャーのセネターシリーズを製造開始
1960:アルネ・ヴォッダー、グレーテ・ヤルクとの協業が拡大
1962:外交官用に採用されたディプロマットシリーズを発表
1964:ポール・カドヴィウスによる買収交渉が始まる
1965:スウェーデンのデザイナー、シグヴァルド・ベルナドッテの作品を製造
1966:ヴァーナー・パントンなど前衛的デザイナーとの接点を模索
1967:ポール・カドヴィウスにより買収が成立、社名をCADOに改称
1968:CADO名義でヴァーナー・パントンの作品を発表
1970:スティーン・オスタガードとの協業を開始し、プラスチック素材の導入が進む
1973:国際市場での競争激化に直面
1975:ポストモダンの潮流が広がり、輸出の需要が低下
1977:ヒレロッド工場の規模縮小が始まる
1979:CADOの家具製造が終了、40年余りの歴史に幕を閉じる


Furniture

・Spadestolen Model 133 | スペードチェア
・Lounge Chair Model 136
・Japan Series Sofa
・Bwana Lounge Chair
・Diplomat Series
・Senator Series FD-109 / FD-110
・Minerva Series
・Boomerang Chair FD-134 / FD-135
・Pinwheel Table 523
・Sideboard Series(Arne Vodder, Grete Jalk designs)


Imprint/Label

・1950年代初期:FDの焼印、または円形メダリオンを使用
・1957年前後:France & Sønへ移行後、新ロゴの金属バッジを採用
・1960年代:Charles W. Franceの署名入りスタンプや金属箔ラベルが用いられる
・輸出向け製品にはJohn Stuart Inc.のラベルが貼付される場合がある
・CADO期:CADOロゴ入りのラベルや焼印が使用され、France & Søn時代のデザインと連続性を持って製造された

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