Story
ルイスポールセンは、単なる照明メーカーではなく「光をかたちづくる」ことを使命とするデンマークの工房である。ランプという物質的な器具よりも、そこから生み出される光そのものを主役と捉え、人間にとって快適で心地よい空間をつくり出すことを目指してきた。その哲学は「Design to Shape Light(光をかたちづくるデザイン)」という言葉に集約され、自然光のリズムを再現することや、眩しさを取り除いた柔らかな光を届けることに重点が置かれている。
創業は1874年。当初はワイン輸入業からスタートしたが、やがて社会が電気の時代に入ることをいち早く察知し、1892年に電気部品や照明器具を取り扱う企業として再出発した。1920年代にはポール・ヘニングセンとの協業を開始し、近代照明の科学と芸術を融合させた画期的な「3枚シェードシステム」を開発する。ヘニングセンは「対数螺旋」の数理を応用し、グレアを排除しながらも効率的に光を制御する仕組みを作り上げた。これにより、ルイスポールセンは照明器具の美的価値を超えて「良質な光そのものをデザインする企業」として国際的に知られるようになった。
1958年の「PH 5」や「PH アーティチョーク」、1971年のヴァーナー・パントンによる「パンテラ」などの名作は、ブランドの思想を体現しつつ、それぞれの時代の文化的潮流と共鳴した。さらにアルネ・ヤコブセンの「AJ」シリーズ、ヴィルヘルム・ラウリッツェンの「VL」シリーズなど、多くのデザイナーとの協業を通じて多彩な光の表現を生み出した。
今日のルイスポールセンは、過去の名作を現代技術で再解釈する一方、nendoの佐藤オオキやルイーズ・キャンベルなど現代デザイナーとの新作開発も積極的に進めている。2023年には東京・青山に世界初の旗艦店を開設し、日本市場を重要な拠点として位置づけた。デンマークと日本に共通するミニマリズムや光と影の美意識は、文化的親和性を裏付けている。
ルイスポールセンが築き上げた最大の遺産は「美しいオブジェクト」ではなく、「生活の質を高める光」を提供する解決策である。その思想は100年以上を経ても揺らぐことなく、未来に向けて新たな光を照らし続けている。
About
Year:1874 – 現在
President:Louis Poulsen(創業者)、その後歴代経営陣
Designer:Poul Henningsen(ポール・ヘニングセン)、Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)、Verner Panton(ヴァーナー・パントン)、Vilhelm Lauritzen(ヴィルヘルム・ラウリッツェン)、他
Place:コペンハーゲン
History
1874:ワイン輸入会社として創業
1878:ワイン事業を閉鎖
1891:デンマーク初の発電所が稼働開始
1892:照明器具や電気部品の供給会社として再出発
1924:ポール・ヘニングセンと協業、パリ万博向けランプを製作
1926:3枚シェードシステムを完成
1930:PHシリーズが住宅や公共建築に採用され、国際的評価を確立
1939:第二次世界大戦期にも生産を継続し、北欧デザインの重要企業へ成長
1958:PH 5 と PH アーティチョークを発表
1960:アルネ・ヤコブセンの AJシリーズを発表
1967:ポール・ヘニングセン死去、遺産を継承しブランド哲学を確立
1971:ヴァーナー・パントンの パンテラ を発表
1980:ヴィルヘルム・ラウリッツェンの作品を製品化(VLシリーズ)
1990:国際市場でのプレゼンスを拡大、北米・アジアへ進出
2000:LED技術への移行を進め、クラシック製品を現代仕様に改良
2010:nendoやルイーズ・キャンベルら現代デザイナーとコラボレーション開始
2015:サステナビリティ方針を強化、「Design to Last」を掲げる
2019:歴史的名作「PH クエスチョンマーク」や「VL ステュディオ」を復刻
2020:グローバル市場に向けて新色シリーズを展開
2023:東京・青山に世界初の直営旗艦店「ルイスポールセン東京ストア」を開設
2024:創業150周年を迎え、記念モデルを発表
Furniture
・PH 5
・PH Artichoke | PH アーティチョーク
・Panthella | パンテラ
・AJ Table / AJ Floor / AJ Wall | AJシリーズ
・VL Studio | VL ステュディオ
・VL Ring Crown | VL リングクラウン
・PH Snowball | PH スノーボール
・PH Contrast
・PH Louvre | PH ルーヴル
・PH Charlottenborg | PH シャルロッテンボー
・PH Grand Piano Lamp | PH グランドピアノランプ
・その他、PHシリーズのテーブルランプ、ペンダント、フロアランプ各種
Imprint/Label
・初期製品には「Louis Poulsen & Co.」の刻印が確認される
・1950年代以降は「LP」ロゴを刻印したメタルプレートを採用
・輸出モデルでは製品裏に「Made in Denmark」シールを貼付
・1970年代以降は型番やシリアル番号が刻印され、正規品識別が可能
・現行モデルはレーザー刻印と紙ラベルを併用し、サステナブル素材を採用