About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1962
Material: Oak / Beech, Paper cord
Size: 幅 58 × 奥行き 50 × 高さ 81 cm(座面高 45 cm、アーム高 約68 cm)
Story
CH37アームチェアは、1962年にハンス・J・ウェグナーがカール・ハンセン&サンのためにデザインしたダイニングチェアです。アームレスモデルのCH36と共に発表され、シンプルでありながら人間工学的に優れた構造を備えています。
この椅子の根幹にあるのは「有機的機能性」というウェグナーの哲学です。アメリカのシェーカー家具に見られる簡素さや、彼自身が研究した中国明朝家具の要素を取り入れつつ、それらを再構築し現代的なデザインへと昇華させました。
フレームには堅牢なオーク材やブナ材が使用され、座面には伝統的なペーパーコードのエンベロープ織りが施されています。この素材選択は、戦後の資材不足を背景としながらも、結果的に耐久性と快適性を兼ね備えた独自のスタイルを確立しました。
細部に至るまで職人的な意匠が光り、特にアームと前脚の接合部は隠されることなくキャップで固定され、構造そのものを美的要素として示しています。これは「正直なデザイン」を体現するものであり、装飾を排しつつも強度と美しさを両立させています。
今日においてもCH37は現行品として生産され続け、素材や仕上げのバリエーションも豊富に展開されています。その控えめで上品なデザインは、家庭用ダイニングから公共空間まで幅広い場面に調和し、時代を超えて普遍的な価値を持ち続けています。
