About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1965
Material: Oak, Beech, Paper cord
Size: W64 × D66 × H80 cm / SH39 cm / AH62 cm
Story
CH44ラウンジチェアは、ハンス・J・ウェグナーが1965年に発表した作品で、彼の「オーガニック・ファンクショナリズム」の哲学を体現する代表的な椅子のひとつです。シェーカー家具から着想を得た簡潔なラダーバックの構造を持ちながらも、ウェグナー独自の曲線やプロポーションを加えることで、禁欲的な機能主義に有機的で温かみのある美しさを与えています。
フレームは無垢のオーク材やビーチ材から成り、仕上げはソープ、オイル、ホワイトオイル、ラッカー、ブラック塗装など多彩に用意されています。座面には耐久性の高いペーパーコードが採用され、熟練の職人による手編みによって快適さと通気性が実現されています。
この椅子の最大の特徴は、アームレストと前脚をつなぐ露出した接合部です。単なる構造を超えて美的な要素として機能し、機能とフォルムを融合させるウェグナーの才能を物語っています。また、背もたれ上部にはクッションを固定するための溝が刻まれており、細部にまで人間工学的配慮が施されています。
CH44は「静かなる傑作」として評価され、Yチェアやザ・チェアのような知名度は持たないものの、ウェグナーの職人的出自とデザイナーとしての教育が融合した成熟した作品と位置づけられます。そのデザインは派手さよりも、完璧なプロポーションとシンプルさに宿る深い美を伝えています。
シリーズとしてCH46、CH47のダイニングチェアやCH53フットスツールとも関連し、体系的なデザイン探求の一環として生み出されました。シンプルながらも奥深い魅力を持つこの椅子は、家庭から公共空間まで幅広い場面で愛用され続けています。