About
Designer: Finn Juhl(フィン・ユール)
Manufacturer: Niels Vodder(ニールス・ヴォッダー)
Year: 1944
Material: Cuban mahogany, Leather
Size: W63 × D72 × H84 cm, SH42 cm
Story
NV44チェアは1944年にフィン・ユールがデザインし、家具職人ニールス・ヴォッダーの工房で製作された椅子です。その有機的で彫刻的なフォルムから「ボーンチェア(骨の椅子)」と呼ばれ、デンマークモダンの転換点を示す作品として高く評価されています。
当時、デンマークは戦時下にあり、木材供給が困難でした。その状況の中で、ユールとヴォッダーは希少なキューバン・マホガニーを用い、複雑な骨格的フォルムを実現しました。この決断は、単なる家具製作を超えた芸術的声明であり、困難な時代における創造性と美学の抵抗を象徴しています。
NV44チェアは、1944年のコペンハーゲン家具職人ギルド展で発表されました。わずか12脚しか製作されなかったオリジナルは、今日に至るまでコレクターの間で垂涎の的となり、オークション市場でも特別な存在感を放ち続けています。
ユールはこの椅子について「動物的な心地よさ」を持つと語り、人体の骨格に着想を得た流れるような曲線を造形しました。その造形は単なる視覚的美しさにとどまらず、人間工学的な快適さを兼ね備えています。翌年のモデル45や1949年のチーフテンチェアへと続く、ユールのデザイン言語の進化をつなぐ重要な橋渡しの存在とも言えます。
現代では「ハウス・オブ・フィン・ユール」によって復刻され、日本とデンマークの職人が協業し、木工と張地の両面で最高水準の技術が注ぎ込まれています。限定生産とシリアルナンバー付きの真正証明により、その希少性は維持され、今もなお世界中の愛好家を魅了しています。