About
Designer: Bernt Petersen(ベルント・ペーターセン)
Manufacturer: Wørts Møbelsnedkeri(ヴォーツ・モブスネッカリ)
Year: 1957
Material: Rosewood, Rattan
Size: W45 × D45 × H41
Story
ベルント・ペーターセンが1957年にデザインしたスツールは、デンマーク・モダンの黄金期を象徴する作品です。キャビネットメーカーとして厳格な訓練を受けた彼は、素材や技術に対する深い理解を備え、その後のデザイン教育と融合させて独自の哲学を築きました。このスツールはその形成期の実践を体現した重要な一例です。
フレームには豊かな色調を持つローズウッドが使われ、座面は軽やかな籐(ラタン)で編まれています。脚部は優雅に先細り、わずかに彫刻的なディテールを伴い、全体として流れるようなプロポーションを持っています。素材のコントラストと正確な造形は、機能と美を兼ね備えたデンマーク・モダンの精神を象徴しています。
このスツールはデンマーク工芸コンペティション「Kunsthåndværkets Prisopgave 1957」に出品され、翌年のキャビネットメーカーズ・ギルド展でも展示されました。これにより若きペーターセンの才能が広く認知される契機となりました。さらに同一デザインをアッシュ材で制作し、1960年の卒業制作としても発表しています。これは豪華な素材から工業生産に適した素材へ移行する彼のデザイン哲学の進化を示すものです。
製作はデンマークの名工房Wørts Møbelsnedkeriが担いました。ヘンリク・ヴォーツにより設立され、後にホルガー・ニッセンに引き継がれたこの工房は、高度な職人技で知られ、ペーターセンとの協働によって生まれたこのスツールは、デザイナーと工房の共生関係を象徴する作品となりました。
このスツールはグレーテ・ヤルクの『40 Years of Danish Furniture Design』や、ペーターセン自身の著作『Møbel & rum』に掲載され、学術的にも高い評価を受けています。初期の豪華なビジョンを記録しつつ、後の実用性重視の方向性を示す作品として、歴史的・美的価値は揺るぎないものとなっています。