3758 Red Chair | レッド・チェア


About

Designer: Kaare Klint(コ―ア・クリント)
Manufacturer: Rud. Rasmussen(ルード・ラスムッセン)
Year: 1927
Material: Mahogany, Niger goat leather, Brass
Size: W52 × D53 × H83(SH46)


Story

「レッド・チェア(モデル3758)」は、カア・クリントが1927年にデンマーク装飾美術館の講義室のために設計した椅子です。18世紀イギリスのチッペンデール様式を参照しながら、人体測定に基づいた機能主義的アプローチで再解釈されました。古典と合理性の融合は、デンマーク・モダニズムの核心を体現しています。

フレームは緻密で赤褐色の美しいマホガニーを使用し、輪郭にはプロファイル加工が施され、直線と曲線の調和が保たれています。座と背には伝統的なニジェール・レザーが張られ、使用とともに自然な経年変化を刻み、時間の流れを語る存在となります。革の取り付けには真鍮鋲が等間隔に打ち込まれ、単なる留め具を超えて装飾的要素として椅子の輪郭を強調しています。

製作を担ったのはコペンハーゲンの名工房ルード・ラスムッセンです。精密な木組みと仕上げ、革張りの工程はすべて手作業で行われ、建築家クリントの厳密な寸法設計を現実の家具として具現化しました。この協業により、単なる家具を超えた設計思想とクラフトマンシップの結晶が生まれました。

1929年のバルセロナ万国博覧会ではグランプリを受賞し、国際的に評価されました。この際「バルセロナ・チェア」とも呼ばれるようになり、以後デンマーク・デザインを象徴する作品として世界に知られるようになります。

本作は後にサイズ違いやアーム付きのバリエーションへと発展し、クリントの原理に基づく適応性を示しました。その一貫した理念は後進のウェグナー、モーエンセンらに継承され、デンマーク家具史の礎となっています。

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