PH Septima 5 | PHセプティマ 5


About

Designer: Poul Henningsen(ポール・ヘニングセン)
Manufacturer: Louis Poulsen(ルイスポールセン)
Year: 1928
Material: Borosilicate glass, Brass
Size: Ø50 × H40.5 cm


Story

PHセプティマ 5は、1928年に発表されたガラス製のペンダントライトで、デンマーク照明デザイン史の中でも極めて重要な位置を占める作品です。発表当時「ガラスの王冠」と呼ばれ、その詩的で繊細な光の表現は多くの人々を魅了しました。

この照明は、ポール・ヘニングセンが探求した「グレア(まぶしさ)のない光」を実現するための研究の集大成として誕生しました。彼が考案した数学的な「PHシステム」を応用し、7枚のガラスシェードを重ねることで、柔らかく均一な光を拡散する仕組みが組み込まれています。透明部分とフロスト加工部分を交互に配置することで、直接光を防ぎつつ、空間全体を穏やかに照らす特性を持ちます。

また、このセプティマは後年の代表作「PHアーティチョーク」の先駆的作品とも言えます。金属製の試作図面が残されており、それが1958年のランゲリニエ・パヴィリオンのためのアーティチョークに発展しました。セプティマは、単なる独立した作品ではなく、ヘニングセンの思想の連続性を示す重要な橋渡しの役割を担っています。

第二次世界大戦期には原材料不足により製造が中止され、現存するオリジナルは極めて稀少です。しかし2020年、ルイスポールセンによって復刻が実現し、耐久性や安定性を考慮した仕様変更とともに再び市場に登場しました。特にソケットハウスには無塗装のサテンポリッシュ真鍮が採用され、使用とともに経年変化を楽しめる仕上げとなっています。

この照明が日本で特に共鳴を呼んでいるのは、光の美学に共通する価値観があるからです。障子や行灯が生む柔らかな間接光と、ヘニングセンが追求した「影を尊重する光」は響き合い、文化を越えて受け入れられています。PHセプティマ 5は、科学と芸術を融合させた永遠の名作として、今もなお世界中で愛され続けています。

PAGE TOP