ハンス・J・ウェグナー「CH88チェア」誕生70周年を迎える

カール・ハンセン&サンが1955年設計の名作を再び讃える


デンマークを代表する家具ブランド、Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)は、ハンス・J・ウェグナー(Hans J. Wegner)が1955年にデザインした「CH88チェア」の誕生70周年を記念し、その普遍的な価値を改めて紹介しています。ウェグナーがスウェーデン・ヘルシンボリの展示会「H55」で発表したプロトタイプをもとに、2014年に初めて正式な量産が開始された同モデルは、異素材の調和と構造の軽やかさを象徴する作品として知られています。

CH88は、木材とスチールという異なる素材を融合させた構造を特徴とし、背もたれには成形合板による繊細な曲線を採用。フレームはスチール製で、直線的なフォルムが全体の軽快さを際立たせています。座面はオークまたはビーチをベースにした木製または張り仕様が用意され、素材の組み合わせによって多様な印象を生み出します。ウェグナーが生涯を通して探求した「構造の美」と「素材の誠実さ」が、この一脚にも凝縮されています。

さらに、CH88はスタッキング(積み重ね)機能を備え、公共空間や商業施設でも高い実用性を発揮します。曲線と直線の絶妙なバランスによるフォルムは、住宅・レストラン・オフィスなど、あらゆる空間に自然と溶け込みます。70年を経てもなお、そのデザインは時代に左右されることなく、モダンな空間に新鮮さをもたらしています。

カール・ハンセン&サンは、ウェグナー生誕100周年を機にCH88を製品化して以来、木部仕上げや座面仕様のバリエーションを拡充。現在では、環境配慮型の素材や最新の塗装技術を採用しながら、オリジナルの理念を継承しています。今回の70周年記念では、同社が改めて「時代を超えて生き続けるデザイン」としてCH88の魅力を世界に発信しています。


CH88とは

CH88は、ハンス・J・ウェグナーが1955年に設計したダイニングチェアで、スチール脚と木製背座を組み合わせた異素材構成が特徴です。背もたれは蒸気曲げによる柔らかなカーブを持ち、端部には肘を預けられる微細な段差を設けています。長年プロトタイプのみの存在でしたが、2014年にカール・ハンセン&サンが正式量産を開始し、以後、ウェグナー後期の再発見作として高く評価されています。ウェグナーが追求した「構造と素材の融合」というテーマを体現する作品として、今も世界中の空間で愛用されています。


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