JH-700 Rostrum | ロストラム(演説台)


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1950s–1960s
Material: Solid oak, steel, brass
Size: H approx.130 × W approx.90 × D approx.100 cm(open)


Story

JH-700 ロストラムは、ハンス・J・ウェグナーが私的空間の椅子ではなく、民主主義が実践される公的空間のために設計した、制度的家具です。演説台という道具に対して、権威を誇示する装置ではなく、人が言葉を発するための「機能」に徹しながら、空間の品位を損なわない輪郭が与えられています。

従来の演説台が箱型構造で話し手を象徴化しがちなのに対し、JH-700はフレーム構造を基調としており、話し手の身体性や存在感を過度に隠しません。視線が抜ける構成は、発言者と聴衆の間に不要な壁をつくらず、対話の場を物理的に整える意図として読むことができます。

このロストラムは折りたたみ構造を備え、使用しない際には極めて薄い状態で収納できます。公共施設に求められる可変性と合理性に応える一方で、動作の精度や構造の整い方には妥協がなく、ウェグナーが職人出身のデザイナーであることを実感させる設計です。

素材は無垢オーク材とスチールの組み合わせです。手が触れる上部には木材の温かみがあり、足元は黒塗装のスチールが安定感を担います。素材の分担が明快で、機能の必然性がそのまま造形として立ち上がっている点に、この作品の静かな強さがあります。


 

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