About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: Johannes Hansen(ヨハネス・ハンセン)
Year: 1970
Material: Wenge,Mahogany,Oak,Steel
Size: W1900 × D950 × H720 mm
Story
JH 810は、ハンス・J・ウェグナーが1970年に設計したフリースタンディング・デスクです。ヨハネス・ハンセン工房との長年の協働関係の中で生まれた本作は、彼の後期デザインにおける建築的思考を明確に示すモデルとして位置付けられます。
構造の中心となるのは、厚みのある木製天板とスチール製ランナーレッグの組み合わせです。U字型のスチールベースは、最小限の接地面で高い安定性を確保しながら、天板を浮遊させるような視覚効果を生み出しています。水平線を強調した構成は、1960年代後半から1970年代にかけてウェグナーが志向した直線的で合理的な造形言語を体現しています。
幕板には2杯の引き出しが統合され、構造体と一体化するように設計されています。取手もスチールで統一され、素材間の緊張関係を保ちながら全体の統一感を形成しています。装飾的要素を排し、機能と比例関係の中で美を成立させる姿勢は、ウェグナーの設計思想そのものです。
本モデルはウェンジ材仕様が確認されており、深い色調と高い硬度が特徴です。スチールの冷静な質感と強い対比を形成し、木材の量感を際立たせています。工芸的な木工感覚と工業素材の合理性を統合する手法は、後期ウェグナー作品の重要な特徴の一つです。
JH 810は単なる事務机ではなく、空間の中心を構成する建築的要素として設計されています。家具単体の造形にとどまらず、オフィス空間全体の秩序を形づくる存在として機能します。合理性と人間的質感を両立させるというウェグナーの一貫した姿勢が、本作にも静かに貫かれています。