フリッツ・ハンセン、2026年テキスタイル刷新

素材革新とデザイン戦略を示す新コレクション


新しい張地コレクションで家具デザインの表現を拡張

デンマークの家具ブランド フリッツ・ハンセン は、2026年に向けた新しい「Curated Upholstery Textile Selection(キュレイテッド・テキスタイル・セレクション)」を発表した。1872年創業の同社は、アルネ・ヤコブセンやポール・ケアホルムといったデザイナーによる家具を世界に広めてきた北欧デザインの代表的ブランドであり、今回のテキスタイル刷新はその家具コレクションを支える重要なアップデートとなる。

新しいセレクションは、合計24種類のプレミアムテキスタイルで構成され、そのうち6種類が新規に追加された。住宅用途だけでなく、ホテル、オフィス、公共施設といったコントラクト市場にも対応する耐久性や機能性を備えながら、家具の造形美を際立たせる素材として選定されている。

フリッツ・ハンセンのクリエイティブディレクター、エルス・ヴァン・フーレベックは、今回の更新について「張地は家具の最終的な層であり、形態の美しさを完成させる要素である」と説明する。特にアルネ・ヤコブセンのチェアのような彫刻的フォルムでは、テキスタイルの質感や色がデザインの印象を大きく左右するという。


KvadratやDedarとの協業による新素材

2026年セレクションの中心となるのは、デンマークのテキスタイルブランド Kvadrat、その傘下の Sahco、そしてイタリアの Dedar との共同開発素材である。

新しく導入された代表的なテキスタイルには次のようなものがある。

Technicolor(Kvadrat)
グラフィックデザイナーのピーター・サヴィルが手掛けたウール素材。英国産ウールを用い、複数色の繊維を段階的に混紡することで奥行きのある色彩を生み出している。耐久性は約80,000マーチンデール。

Fuse(Kvadrat / Raf Simons)
ファッションデザイナーのラフ・シモンズが設計したストライプ織りのテキスタイル。ウールとコットンの混紡素材で、約100,000マーチンデールという高い耐久性を持つ。

Cifrado(Sahco)
リサイクルポリエステルやコットンを組み合わせた重量感のある織物で、公共空間に適した質感を持つ。

Acca(Sahco)
ブークレ糸を使用したテキスタイルで、リサイクル素材を50%以上使用。曲面を持つチェアに豊かな表情を与える。

Mammuth(Dedar)
ウールとリネンを中心とした厚手の素材で、手織りのような不規則な質感が特徴。

Voulez-Vous(Dedar)
再生コットンを多く含むツイル素材で、撥水性を備え住宅用途にも適する。

これらの素材は、耐久性、触覚的な質感、そして色彩表現を組み合わせることで、フリッツ・ハンセンの家具に新しい表情を与えることを目的としている。


サステナビリティと循環型デザイン

今回のテキスタイル刷新では、持続可能性も重要なテーマとなっている。多くの素材にリサイクル繊維が採用されているほか、デンマークのファッションブランド Another Aspect との協働プロジェクトも進められている。

この取り組みでは、衣料生産の残布を Dot™ スツールの張地として再利用する一方、フリッツ・ハンセンの家具製造過程で生じるレザーの端材をバッグやアクセサリーへ再利用するなど、素材を循環させる仕組みが試みられている。

テキスタイル開発を担うKvadratも2030年までの環境目標を掲げており、リサイクル素材の拡大や水使用量削減など、家具業界全体でのサステナビリティの取り組みが進んでいる。


2026年インテリアトレンドとの関係

新しいテキスタイルコレクションは、2026年のインテリアトレンドとも密接に関係している。

近年の家具デザインでは、硬質なミニマリズムから「ソフトモダニズム」と呼ばれる温かみのある表現へと移行している。丸みを帯びたフォルムや触感の豊かな素材が好まれ、ブークレ、ウール、リネンなどの天然素材の人気が高まっている。

色彩ではモカ、テラコッタ、モスグリーンなどの自然由来のアースカラーが中心となり、家具や壁を同系色で統一する「カラー・ドレンチング」と呼ばれるインテリア手法も広がっている。今回のテキスタイルは、こうしたトレンドに対応する豊富なテクスチャーとカラーバリエーションを備えている。


日本市場での展開

日本市場では2026年春から、フリッツ・ハンセンの家具を対象とした「ダイニングルーム・キャンペーン」が予定されている。
期間は2026年3月から6月までで、セブンチェアやスーパー楕円テーブルなどの人気モデルが特別価格で販売される予定だ。

このキャンペーンでは、新しいテキスタイルを使用したフルパディング仕様のセブンチェアなども紹介され、素材の違いによる家具の印象の変化を体験できる機会となる。


素材革新が示すブランドの未来

フリッツ・ハンセンの2026年テキスタイルセレクションは、単なるカタログ更新ではない。
それは、家具デザインにおいて素材がどれほど重要な役割を持つかを示す試みであり、同時に持続可能なデザインへの移行を象徴するプロジェクトでもある。

KvadratやDedarといった世界的テキスタイルブランドとの協業は、家具と素材の境界をさらに曖昧にし、北欧デザインの新しい方向性を示している。家具の形そのものは変わらなくても、素材の革新によってその表情は大きく変化する。今回のコレクションは、150年以上続くブランドが次の時代へ進むための重要なステップといえるだろう。


フリッツ・ハンセンとは

フリッツ・ハンセンは1872年にデンマークで創業した家具ブランドで、北欧モダンデザインを象徴するメーカーとして知られる。アルネ・ヤコブセンがデザインしたセブンチェアやエッグチェア、ポール・ケアホルムのスチール家具など、多くの名作を現在まで製造している。

同社の特徴は、家具デザインだけでなく素材開発にも強いこだわりを持つ点にある。木材、レザー、そしてテキスタイルといった素材を家具の造形と一体で考えることで、北欧デザインの機能性と美しさを両立させてきた。

今回の2026年テキスタイルセレクションは、その素材哲学を現代のサステナビリティやインテリアトレンドと結び付けた新しい取り組みとなっている。


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