PK111 Screen | スクリーン


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: E. Kold ChristensenFritz Hansen
Year: 1956
Material: Oregon pine
Size: H1402 × W1340 × D250 mm(6パネル時)


Story

PK111は、ポール・ケアホルムの思想が最も純粋な形で現れた空間装置の一つです。一般的な家具が用途に応じた単体として設計されるのに対し、本作は「空間そのものを構成する要素」として構想されています。スクリーンでありながら、単なる仕切りではなく、配置や連結によって空間の質を変化させる柔軟なシステムとして成立している点に、この作品の本質があります。

構造は極めて簡潔です。薄く成形された積層板を2枚組み合わせ、わずかなオフセットによって生じる隙間を利用し、隣接するパネル同士を差し込むことで連結します。この仕組みにより、蝶番や金具といった付加要素を排しながら、自由度の高い配置を可能にしています。直線的な並びだけでなく、緩やかな曲線や囲い状の構成も実現でき、空間に対して有機的な変化を与えます。

高さの設定にも明確な意図があります。着座時には視線を遮り、適度な囲いを生み出しながら、立ち上がると視界が開ける。この二重の視覚体験は、空間を閉じすぎることなく領域を分節するための建築的な回答といえます。壁のように固定されることなく、人の動きとともに意味を変える点において、PK111は家具と建築の中間に位置する存在です。

素材として採用されたオレゴンパインは、垂直方向に通る木目が連続的なリズムを生み、空間に秩序を与えます。さらに、時間の経過とともに深まる色調の変化は、静かな表情の中に奥行きをもたらし、環境とともに成熟していく性質を備えています。過度な素材表現を排しながらも、木材の構造的特性と視覚的効果を最大限に引き出している点に、ケアホルムの設計姿勢が現れています。

製造はE. コールド・クリステンセンによって支えられました。高度な成形技術を持つ工房との協働により、この簡潔な構造が高い精度で実現されています。その後、PPモブラーによる再生産を経て、近年ではフリッツ・ハンセンによってコレクションとして復刻され、現代の空間に再び提案されています。この流れは、PK111が単なる歴史的作品にとどまらず、現在の建築的空間においても有効な構成要素であることを示しています。

PK111は、家具の枠を超えた存在です。それは空間を仕切る道具であると同時に、空間を再構築するための思考そのものでもあります。静かな造形の中に宿る論理と柔軟性は、時代や用途を越えて、建築的な視点からの空間のあり方を問い続けています。

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