PK4 Lounge Chair | ラウンジチェア


About

Designer: Poul Kjærholm(ポール・ケアホルム)
Manufacturer: Thorsen mobler・Fritz Hansen(フリッツハンセン)
Year: 1952
Material: Steel, Flag halyard
Size: W625×D745×H720×SH380(mm)


Story

PK4は、ポール・ケアホルムの初期思想を端的に示すラウンジチェアであり、1952年という極めて早い段階で、彼の設計理念がすでに確立されていたことを物語っています。木工家具が主流であった当時のデンマークにおいて、スチールという工業素材を主軸に据えたこの椅子は、明確に異なる方向性を提示するものでした。

構造の核心は、最小限の要素によって成立する合理性にあります。フレームは複数のスチールパイプによって構成され、それらを一体化することで安定性と軽やかさを同時に実現しています。脚部は中央に集約され、そこから座面が広がる構成は、視覚的な浮遊感を生み出しながら、床面との関係を極めて繊細に保っています。この設計は、単なる軽量化ではなく、空間に対する干渉を最小限に抑えるための意図的な構造です。

座面と背はフラッグハリヤードによって形成されており、一本の連続したラインが身体を受け止めます。この構造は、張りぐるみとは異なり、素材そのものの弾性を利用した支持方法であり、身体の荷重に応じて自然に沈み込みます。結果として、過度なクッション性に頼ることなく、適度な通気性と保持力を両立した座り心地が生まれています。

また、PK4は当初、商業製品としてではなく、限られた人々のために制作された背景を持ちます。この点においても、後の量産モデルとは異なる、より個人的で実験的な性格が感じられます。設計そのものが目的であり、同時に使用されることを前提としたプロトタイプのような位置付けであったと考えられます。

2023年にフリッツ・ハンセンによって復刻されたことで、この作品は初めて広く流通することとなりました。現代の製造技術によって、当時は難しかった精度や仕上げが実現され、スチールの質感そのものがより明確に表現されています。それでもなお、構造の本質は一切変わっておらず、1952年の設計意図がそのまま現代に引き継がれています。

PK4は、ケアホルムの作品群の中でも、特に純度の高い構造表現を持つ椅子です。装飾や過剰な機能を排し、素材と構造だけで成立するその佇まいは、空間の中で静かに存在しながら、確かな緊張感をもたらします。それは家具でありながら、同時に構造そのものの美しさを提示する一つの到達点ともいえる存在です。

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