GE290とGE240の違いとは|ウェグナーが描いた「構造」と「線」の思想


GE290とGE240は、どちらもハンス・J・ウェグナーがGETAMAのためにデザインした代表的なイージーチェアですが、実際には構造思想そのものが大きく異なります。単純な意匠違いではなく、「身体をどう支えるか」という考え方がまったく違う椅子です。

GE290の最大の特徴は、座面と後脚が連続した構造にあります。座面を支えるフレームから、そのまま後脚が斜めに伸び、背もたれの角度を形成しています。この構造によって、椅子全体がひとつの大きな骨格として成立しており、非常に強い安定感を生み出しています。横から見た際の、後方へ大きく流れるフレームラインは、まるで建築構造のようでもあります。

また、GE290のアームは非常に特徴的です。厚みのある平たい無垢材をそのまま用いたような無骨な造形で、地面に対して水平に設計されています。単なる肘置きではなく、本やカップを置くための小さなテーブルのような機能性も持っています。この“平たい板”としてのアームは、GE290の建築的な印象を決定づける重要な要素です。

この構造によって、GE290は非常に深い後傾姿勢を持っています。身体を自然と後方へ預ける構成になっており、座るというより「沈み込む」に近い感覚があります。長時間の読書や音楽鑑賞など、静かに身体を休めるための椅子として設計されていることがよく分かります。

一方のGE240は、GE290とはかなり異なる考え方で設計されています。GE240は“シガーチェア”とも呼ばれますが、その理由はアーム形状にあります。中央がふくらみ、先端へ向かって細くなるアームは、葉巻のような柔らかな曲線を描いています。GE290の板状アームとは対照的で、手を置いた際に自然に馴染む有機的な形状です。

構造面でもGE240は大きく異なります。GE290のように座面と後脚が一体化しておらず、前脚・後脚・座面フレームがそれぞれ独立した4本脚構造として成立しています。そのため、空間に置いた時に“抜け”が生まれ、GE290ほどの重量感がありません。視覚的にも軽やかで、柔らかい印象があります。

この構造差は、座り心地にも大きく影響しています。GE240はGE290ほど深い傾斜を持たず、座面も比較的立っています。重心が後ろへ流れすぎないため、立ち座りが非常にしやすい。GE290が“静的な休息”を目的としているのに対し、GE240は会話や日常動作を含めた“生活の中の椅子”としての性格が強いように感じられます。

GE290は「構造体としての椅子」であり、GE240は「線で構成された椅子」とも言えます。GE290には建築的な力強さがあり、GE240には木を削り出したような彫刻性があります。同じGETAMA製でありながら、ウェグナーがまったく異なるアプローチで“快適さ”を追求していたことが、この2脚を比較すると非常によく分かります。

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