AP40 Lounge Chair | カストラップ・ラウンジチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1958
Material: steel, Leather
Size: W600 × D680 × H760 × SH400 mm


Story

1958年、コペンハーゲン空港のラウンジ空間のために設計されたAP40は、ハンス・J・ウェグナーの設計思想が大きく拡張されたことを示すモデルです。木工家具の名匠として知られる彼が、ここではステンレススチールを主要構造体として採用し、公共空間に求められる合理性を徹底的に追求しました。

空港という環境では、不特定多数が長時間使用することを前提に、高い耐久性とメンテナンス性が不可欠です。AP40は、細身のステンレスチューブフレームによって軽快な外観を保ちながら、荷重を効率よく分散する構造を実現しています。視覚的なボリュームを抑えつつ、強度を確保する設計は、機能と造形を一致させるウェグナーの姿勢を明確に示しています。

接合部や固定機構は極力整理され、ネジや金具の存在感を抑えたクリーンな表現が採用されています。構造そのものを装飾に置き換えるのではなく、構造をそのまま美として提示する姿勢が、この椅子の本質です。

座面と背もたれは一体化したシェル状の構成で、内部構造も含めて工業的な合理性のもとに設計されています。レザーは単なる被覆材ではなく、張力によって面の安定性を保つ重要な要素です。曲線は人間工学的配慮によって形成され、身体を自然に受け止める形状となっています。

AP40は単体のラウンジチェアにとどまらず、複数人掛けソファを含むシリーズとして展開されました。水平に伸びるステンレスのラインは建築空間と高い親和性を持ち、空間全体に秩序と透明感をもたらします。

木の彫刻家と称されたウェグナーが、工業素材を用いて到達したもうひとつの極致。それがAP40であり、カストラップ・シリーズは機能美の純度を極限まで高めた静かな名作といえます。

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