4段焼印、郵便番号、品質管理マークからたどるGETAMA家具の歴史
GETAMAの刻印から年代は分かるのか
ヴィンテージのGETAMA家具を見ていると、木部に直接押された焼印、Hans J. Wegnerの署名を使ったラベル、品質管理を示すマーク、創業100周年を記念した表示など、さまざまな刻印やラベルに出会います。これらは、その家具がいつ、どこで、誰によってつくられたのかを考えるうえで重要な手掛かりです。一方、ヴィンテージショップやオークションハウスでは「1950年代製」「1960年代製」といった年代がしばしば記載されていますが、その判断根拠が明示されていない例も少なくありません。
GETAMAの家具についても、販売者が付した年代をそのまま製造年代として扱うことには慎重であるべきでしょう。オークションや販売記録は、どのモデルにどの刻印が存在するのか、どのような構造や素材が確認できるのかを知るための重要な資料です。しかし、そこに記された「1950s」「circa 1960」といった説明自体は、別の資料によって裏付けられない限り、年代判定の根拠とはしません。
特に区別しておきたいのが、家具のデザイン年と、現存する個体が実際に製造された年です。たとえば1953年にデザインされた椅子が、その後20年以上にわたって生産されていたとすれば、1970年代に製造された個体も存在します。その家具にある刻印を見つけても、「1953年のデザインだから、この刻印も1953年から使われていた」と考えることはできません。一方、1969年に初めてデザインされた家具であれば、その個体が1968年以前に製造されることはありません。デザイン年は製造年を直接示す情報ではなく、その個体が製造され得る最も早い時期を考えるための基準になります。
GETAMAとHans J. Wegnerの協働は1949年頃に始まり、1950年前後から複数の家具が発表されました。その後も両者の関係は長く続き、同じモデルが長期間製造された例もあります。したがってGETAMAの刻印を考える際には、「この刻印は何年代のものか」と最初から決めるのではなく、モデルの成立年、住所、制度、会社名、実物に残された日付など、独立して確認できる情報を重ねながら、その表示がいつ存在し得たのかを考える必要があります。
4段焼印と銀色ラベル——初期から中期の表示
ヴィンテージGETAMAを象徴する表示の一つが、木部に直接押された「GETAMA / GEDSTED / DENMARK / DESIGN HANS J. WEGNER」という4段の焼印です。GE240、GE270、GE290、GE370、GE375など、WegnerがGETAMAのために手掛けた多くの家具に同じ文言の刻印が確認されています。


現在確認できる実物を比較すると、同じ4段の文言でありながら、GETAMAの文字が太く比較的コンパクトなものと、線が細く文字間隔の広いものがあります。文字幅や字間、全体のプロポーションにも違いが見られるため、少なくとも複数の焼印型が存在した可能性があります。しかし、太字が古く細字が新しい、あるいはその逆であることを示す資料は、現時点では確認できていません。木材の硬さ、焼印の温度や押圧、研磨、経年変化によっても見え方は変わるため、字体の違いそのものと年代差を分けて考える必要があります。
この4段焼印の年代を考えるうえで重要なのがGE375です。GETAMAの公式資料ではGE375のデザイン年を1969年としており、そのGE375の実物個体にも「GETAMA / GEDSTED / DENMARK / DESIGN HANS J. WEGNER」という4段焼印が確認されています。GE375そのものが1969年より前には存在しないため、この事実から、4段焼印は少なくとも1969年以降に製造された家具にも使用されていたことが分かります。したがって、4段焼印を「1950年代の刻印」と限定することはできません。
ただし、1969年という年は4段焼印の使用開始年を意味するものでもありません。1950年代にデザインされたGE270やGE290にも同じ文言を持つ個体は存在しますが、それらの個体そのものがいつ製造されたかを独立して証明できなければ、焼印が1950年代から使用されていた証拠にはなりません。現在分かっているのは、4段焼印が比較的広いモデル群に用いられ、少なくとも1969年以降にも存在したということです。
もう一つ興味深いのが、Hans J. Wegnerの署名を大きく使った銀色のラベルです。「Design: Hans J. Wegner / MADE BY / GETAMA / GEDSTED – DENMARK」と記されたこの表示は、木部に直接押す焼印とは異なり、よりグラフィックなブランドラベルとしてつくられています。

外観だけを見れば、4段焼印からこの銀色ラベルへ移行したようにも見えます。ところが、GE440の一個体では、4段焼印と銀色のWegner署名ラベルが同じ家具に並んで存在することが確認されています。この実例によって、「4段焼印が廃止され、その後銀色ラベルへ変更された」という単純な変遷は成り立ちません。少なくとも一部の製品では、焼印と貼付ラベルが同時に使用されていました。
なぜ二つの表示が必要だったのかはまだ分かっていません。輸出市場、販売経路、製品シリーズ、あるいはブランディング上の理由なども考えられますが、それを説明するGETAMAの一次資料は現在のところ確認できていません。GETAMAの刻印史は、古い表示から新しい表示へ一直線に置き換わっていったものではなく、用途や製品によって複数の表示方法が併存していた可能性を考える必要があります。
郵便番号と品質管理マークから年代を考える
字体やラベルのデザインよりも、年代を考えるうえではるかに明確な手掛かりになる場合があるのが、住所や制度の名称です。GETAMAのラベルの一つには「9631 GEDSTED DENMARK」と記されています。この9631はGedstedの郵便番号ですが、デンマークで現在につながる4桁の郵便番号制度が導入されたのは1967年秋です。したがって、このラベルが家具の製造時から付いていたものであれば、9631 GEDSTEDという表示は1967年秋以前には存在し得ません。

しかし、ここから「1960年代末のラベル」とまで判断することはできません。9631という郵便番号は、その後も長期間GETAMAの住所として使用されました。この表示が教えてくれるのは、1967年秋より前ではないという下限だけです。それでも、外観の印象から「おそらく1960年代」と推測することとは証拠の性質が異なります。制度が始まる以前を確実に除外できるという意味で、郵便番号はGETAMAのラベル年代を考えるうえで有効な指標です。
同じように重要なのが、「DANISH FURNITUREMAKERS’ QUALITY CONTROL」と記された品質管理マークです。Dansk Møbelkontrolという家具品質管理制度そのものは1959年に設立されましたが、制度の開始年と、この英語表記が使われ始めた時期は同じではありません。

米国の商標記録では、旧表記の「DANISH FURNITUREMAKERS’ CONTROL」は1960年5月1日を最初の使用日としているのに対し、「DANISH FURNITUREMAKERS’ QUALITY CONTROL」という表記は1978年12月を最初の使用時期として申告されています。このため、「QUALITY CONTROL」と記されたマークは、1978年末より前の表示とは考えにくいという年代の下限を設定することができます。
GETAMA自身がいつDansk Møbelkontrolに参加したのかについては、まだ確定していません。1970年代のKraks Vejviserでは、Dansk Møbelkontrolの会員企業を示す記号が他メーカーには付されている一方、GETAMAにはその記号を確認できない年があります。少なくとも1970年代半ばの資料からは、GETAMAが1959年の制度創設当初から加盟していたと考える根拠は見つかっていません。一方、2005年の日付を伴うGETAMA家具にはDanish Furnituremakers’ Quality Control表示を持つ実例があります。
現段階では、「QUALITY CONTROL」という名称そのものは1978年末以降、GETAMAによる正確な採用時期は未確定、そして2005年までには実物使用例が存在する、という整理が最も慎重です。ここでも重要なのは、制度の創設年だけを見るのではなく、実際にラベルに何と書かれているのかまで確認することです。
100周年以降のラベルと日付表示
1990年代末以降になると、GETAMAのラベルには年代と直接結びつく情報が増えていきます。その一つが「GETAMA 100 ÅR」という表示です。GETAMAは1899年に創業しているため、この「100 ÅR」は1999年の創業100周年に由来する表示と考えることができます。

ただし、100 ÅRと記されているからといって、その家具が必ず1999年に製造されたとは限りません。100周年を契機につくられたラベルや記念的な表示が、その後もしばらく使用されていた可能性があるためです。ここでも分かるのは「1999年の創業100周年を起点とする表示」であるということであり、個体の製造年を一点に決めるためには別の資料が必要になります。
さらに後期のGETAMAでは、ラベルそのものに具体的な日付が記録されるようになります。現在確認できる一例には「2 NOV 2016」という日付が直接印字され、別のGETAMA家具には「02 FEB. 2022」という同系統の日付表示も確認されています。

これは販売者が「2010年代製」「2020年代製」と推測していることとは証拠の性質が異なります。日付そのものが家具に残されているからです。ただし、その日付が製造完了日、検品日、梱包日、出荷日のどれを意味するのかを説明するGETAMAの資料は、現在のところ確認できていません。そのため「2016年11月2日製」と断定するのではなく、2016年11月2日という日付がその個体に直接記録されている、とするのが適切でしょう。
初期の刻印は、GETAMAというメーカー名、Gedstedという生産地、Denmarkという原産国、そしてHans J. Wegnerというデザイナーを示すものでした。それに対して後期のラベルでは、周年や具体的な日付まで記録されるようになります。刻印がブランドの所在を示すためのものから、家具そのものの履歴をより細かく伝える情報へと変化していった様子を見ることができます。
刻印・ラベルから見えるGETAMAの変化
GETAMAの刻印やラベルを年代順に並べようとすると、当初は「1950年代はこの焼印、1960年代はこのラベル、1970年代はこのマーク」という明快な年表をつくりたくなります。しかし、実物と資料を重ねていくと、そのような単純な整理ができないことが分かります。4段焼印は1969年以降に成立したモデルにも存在し、銀色のWegner署名ラベルとは同じ家具の上で併用されていました。9631という郵便番号は1967年秋という下限を与え、「DANISH FURNITUREMAKERS’ QUALITY CONTROL」という表記からは1978年末という別の年代境界が見えてきます。そして1999年の100周年表示、2016年や2022年の日付入りラベルになると、家具そのものにより具体的な時間の情報が残されるようになります。
ここから分かるのは、刻印が製造年代を直接教えてくれる「答え」ではないということです。モデルの成立年、住所、会社名、品質管理制度、構造、来歴、家具そのものに残された日付などを重ねることによって、「この個体はいつ製造され得たのか」という範囲を少しずつ狭めていくことができます。オークションハウスやヴィンテージショップの資料も、その年代記載をそのまま採用するのではなく、実物の刻印、ラベル、構造を観察するための資料として使うことで価値を持ちます。
もう一つ興味深いのが、後期のGETAMAに見られる「WEGNER BY GETAMA」という表示です。初期から確認される4段焼印では、最初にGETAMAがあり、その下に「DESIGN HANS J. WEGNER」と記されます。一方、「WEGNER BY GETAMA」では、Wegnerの名前がもっとも大きく前面に置かれています。

この表示がいつ導入され、GETAMA自身がどのような意図で採用したのかを示す一次資料はまだ確認できていません。しかし、表示の構成だけを見ても、メーカーとデザイナーの関係の見せ方が変化したことは分かります。1950年代にはHans J. WegnerがGETAMAのために新しい家具を設計していました。その後、Wegnerは20世紀デンマーク家具を代表する存在となり、彼の作品自体が歴史的なデザイン遺産として評価されるようになります。「GETAMAがWegnerの家具を製造する」という関係から、「WegnerのデザインをGETAMAが継承する」という見せ方へ変化していったようにも読み取れます。
刻印やラベルは、家具全体から見れば非常に小さな部分です。しかし、そこに記されたメーカー名、住所、認証マーク、日付、デザイナー名を一つずつ読み解いていくと、その家具が通過してきた時代が少しずつ見えてきます。GETAMAの刻印を調べることは、単にヴィンテージ家具の製造年代を判別するためだけの作業ではありません。Gedstedの家具メーカーとして歩んできたGETAMAが、Hans J. Wegnerとの長い協働をどのように自社の歴史として受け継ぎ、やがてブランドとして表現するようになったのか。その変化もまた、小さな刻印やラベルの中に残されているのです。