AP32S Sofa | ソファ


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1950
Material: Oak Beech Upholstered
Size: W2030 × D780 × H780 × SH420 mm


Story

AP 32 Sは、ハンス・J・ウェグナーが1950年に発表した総張りソファであり、APストーレンとの協働によって生まれた重要なモデルです。北欧デザイン黄金期の初動に位置し、同時期のラウンジチェア群と並行して構想された張り構造の展開例といえます。

本作の特徴は、水平性を強調したプロポーションと、軽やかなテーパードレッグによる浮遊感にあります。背からアームへと連続する曲線は穏やかで、量感のある座部を細身の脚部が支える構成によって、空間に過度な重さを与えません。装飾的要素は極力排され、輪郭と比率のみで造形が成立しています。

構造面では、内部フレームにビーチ材を用い、脚部にはオーク材を採用するなど、適材適所の素材構成が徹底されています。張り構造は当時の伝統的手法に基づき、スプリングと天然繊維を組み合わせた多層構成によって、反発と保持力の均衡を図っています。外からは見えない骨格こそ精緻に仕上げるという、デンマーク工房の倫理観が反映された設計です。

AP 32 Sは、同系統のAP 31アームチェアと対を成す存在としても位置づけられ、住宅空間における統一的な構成を想定していました。公共向けモデルとは異なり、家庭内での対話や静かな休息を支えるスケールに抑えられており、ウェグナーが追求した「正直な構造」と「身体に即したかたち」が端的に表れています。

量塊と線の均衡、張り構造の面による包容、そして木脚による軽快な支持。AP 32 Sは、木工中心の歴史観とは異なる、総張り家具におけるウェグナーの思想を示す一例であり、APストーレンの高度な技術と結びついた静かな完成形といえます。

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