About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1950s
Material: Steel, Fabric, Leather
Size: AP34/1 W78 × D81 × H69 cm, AP34/2 W148 × D76 × H72 cm, AP34/3 W210 × D76 × H72 cm, AP34/4 W272 × D76 × H72 cm
Story
AP34「エアポート・シリーズ」は、1950年代後半にコペンハーゲン・カストロップ空港のラウンジのために特別に設計された作品です。木工の巨匠であるウェグナーが、あえてスチールを主要な構造材として採用したことにより、彼のデザインの進化を示す重要なシリーズとなりました。
張りぐるみのボリューム感あるシート部分は、利用者に包み込まれるような快適性を提供します。その一方で、脚部は繊細なスチールロッドで支えられ、重厚な張り地を軽やかに浮遊させるような印象を与えています。この軽快さと強度の両立こそが、AP34シリーズの最大の美学的特徴です。
AP34は1人掛けのAP34/1から、最大4人掛けのAP34/4まで展開されました。いずれのモデルも空港の公共空間に求められる耐久性と機能性を備えながら、同時にデザイン家具としての洗練された存在感を放っています。
ウェグナーはこれ以前にもオックスチェアでスチールを導入していましたが、AP34シリーズでは公共空間に求められる実用性とモダニズムの軽快な表現を見事に融合させました。その結果、温かみあるデンマークモダンと、工業的な国際モダニズムを橋渡しする稀有な作品となっています。
このシリーズは単なる座具を超え、建築空間全体の印象を変える力を持った「機能的な彫刻」として評価されています。今日でも美術館やデザイン史において語り継がれ、ウェグナーの柔軟な創造性と職人技を象徴する存在です。

