About
Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン)
Year: 1956
Material: Steel, Fabric, Leather, Wood
Size: W193 × D76 × H72-73 cm / SH40 cm
Story
AP35 Sofaは、ハンス・J・ウェグナーがAP Stolenのためにデザインした「エアポートシリーズ」の中核を成す作品です。木材中心のキャリアを築いてきたウェグナーが、スチールを大胆に取り入れたことで、彼の素材探求の幅を示す重要な一歩となりました。直線的でクリーンなシルエットと緊張感のある張地のラインは、構造そのものをデザインとして提示する彼の哲学を反映しています。
1950年代後半、公共空間やオフィス家具に求められた耐久性と軽快さを体現しつつも、ウェグナーはそこに快適性と美意識を融合させました。特に背とアームが一体化したフォルムや、3つに分割されたシートクッションのリズムは、実用性と視覚的なリファインメントを両立しています。
このソファは、布張り家具を得意とするAP Stolenの高度な技術なくして実現できなかったデザインです。内部には堅牢な木製フレームが隠され、脚部にはスチールチューブが採用され、張り地にはファブリックやレザーが選択肢として提供されました。その結果、重量感あるボディが軽快に浮遊するような印象を与えています。
また、AP35 Sofaはカストラップ空港のラウンジで使用されたことから「エアポートシリーズ」の呼称が定着しましたが、もともとは幅広い用途を想定して設計されたモジュール家具群の一部です。この汎用性こそ、デンマークモダンの精神を象徴するものといえます。
今日においてもAP35 Sofaは復刻されておらず、すべての現存個体はオリジナルのヴィンテージ品です。その希少性はコレクターの間で高い注目を集めていますが、同時に知名度の低さが専門的な愛好家向けの「隠れた名作」としての価値を高めています。
