AP45(CH445)Wing Chair | ウィングチェア


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)
Manufacturer: AP Stolen(APストーレン) / Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
Year: 1960
Material: Beech, Steel
Size: W90 × D97 × H103 cm / SH40 cm


Story

1960年に発表されたウィングチェア AP45は、ハンス・J・ウェグナーの成熟期を象徴する張りぐるみチェアの傑作です。彫刻的なフォルムと深い快適性を兼ね備えた本作は、単なる家具ではなく「個人の休息空間」を形成する建築的存在として位置づけられています。

ウェグナーは14歳で家具職人として修業を始め、木材の特性や人間工学を徹底的に理解することで独自の「オーガニック・ファンクショナリズム」を確立しました。ウィングチェアにおいては、布張りによる有機的なボリュームと、ステンレススチール脚による軽やかさが融合し、浮遊感のある造形を実現しています。

背もたれ上部の「ウィング」は首や肩を包み込むように支え、ショルダーラインの水平ステッチは身体に自然な安定をもたらします。アームは座面から滑らかに連続し、閉じた空間性を強調することでプライバシーと安心感を演出します。この一体感のあるデザインは、使用者に静けさと包容力を与え、深い安らぎを提供します。

AP Stolenによる初期生産はごく少数に限られ、その希少性は今日でも特別な意味を持っています。労働集約的で高コストな製造方法が、当時の市場に受け入れられにくかった理由の一つと考えられます。オリジナルのAP45は現在、ヴィンテージ市場でもほとんど姿を見せない幻の存在となっています。

2006年、カール・ハンセン&サンによって復刻されたCH445は、ウェグナーのオリジナル図面に忠実な再現として再登場しました。Kvadrat社などの現代的なファブリックや高品質のレザーを選択でき、専用のフットスツール CH446 と組み合わせることで、デザインと快適性がさらに高まります。こうしてウィングチェアは、半世紀以上を経てもなお、モダンデザインの象徴として現代の空間に息づいています。


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