AX Table/Bench | テーブル/ベンチ


About

Designer: Peter Hvidt(ピーター・ヴィッツ), Orla Mølgaard-Nielsen(オルラ・モルガード=ニールセン)
Manufacturer: Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
Year: 1954
Material: Teak, Beech, Upholstery
Size: W191 × D48 × H40.5(44)


Story

「AX」テーブル/ベンチは、デンマーク・モダンデザインの歴史における重要な瞬間を象徴する作品です。1954年、コペンハーゲン家具職人組合の創立400周年記念展のために、フリッツ・ハンセン社が特別に製作した一点物であり、量産を前提とした「AX」シリーズを、職人技を称える展示の舞台にふさわしい水準にまで高めたものです。

ピーター・ヴィッツとオルラ・モルガード=ニールセンの設計は、建築的かつ工学的な思考に根ざしていました。特に、彫刻的なY字型の脚部は視覚的な軽やかさと構造的な安定性を兼ね備え、建築家として培った感覚が色濃く反映されています。テーブルとしてもベンチとしても使える多用途性を備えたこの作品は、合理性と美しさを一体化させています。

フリッツ・ハンセン社は第二次世界大戦中に発展したラミネーション技術を家具に応用し、成形合板による革新的なデザインを可能にしました。この技術は「AX」シリーズに活かされ、国際的な輸出と普及を可能にすると同時に、のちの「Ant™チェア」や「Series 7™チェア」への道を開く契機となりました。

1954年の展覧会用に特別に製作された「AX」テーブル/ベンチは、その背景から量産品とは異なる独自の存在感を放ちます。チーク材とブナ材のコントラスト、取り外し可能なシートクッション、多機能性を兼ね備えた設計は、デンマーク家具の黄金時代における職人技と工業技術の融合を示す典型です。

この作品は単なる家具以上の意味を持ち、デザインの民主化を目指した量産思想と、伝統的な職人技を顕彰する理念の交差点に位置しています。その特異な来歴は、このピースを美術館級の工芸作品として際立たせています。

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