RY8 Bookcase | ブックケース


About

Designer: Hans J. Wegner(ハンス・J・ウェグナー)
Manufacturer: RY Møbler(ロユ・モブラー)
Year: 1949
Material: Oak or Teak
Size: W1000 × D335 × H1805 mm


Story

RY8は、ハンス・J・ウェグナーがRY Møblerのために設計したモジュール式収納シリーズの代表的なブックケースです。幅1000mmという統一寸法を基準とし、同シリーズのチェストやキャビネットと組み合わせることで、壁面全体を構成できる建築的な収納体系を形成します。家具単体として完結するのではなく、空間の秩序を構築する要素として設計されている点に本作の本質があります。

高さ約1805mmのトールユニットは、室内に明確な垂直性をもたらします。側板は一体構造で構成され、中央付近に設けられた固定棚が全体の剛性を高めています。可動棚は真鍮製棚受けによって高さ調整が可能であり、用途に応じた柔軟な構成が可能です。構造的合理性と実用性が高度に統合されています。

棚板は十分な厚みを確保しながら、前縁に繊細な面取りを施すことで視覚的な軽さを実現しています。重量のある書籍を支える強度を備えつつ、正面からは軽快に見える設計です。重さと軽さの均衡は、ウェグナーの造形哲学に通底する重要な要素です。

素材は主にオークまたはチークで展開されました。オークは明瞭な木目と堅牢性を備え、構造の明快さを強調します。チークは深みのある色調と安定した材質特性を持ち、落ち着いた存在感を空間に与えます。素材の特性を尊重し、その質感を正直に見せる構成が採用されています。

側板に現れるダボの痕跡は、接合構造を隠さず示すウェグナーの設計姿勢を象徴しています。装飾を排し、構造そのものを意匠とする態度は、彼が家具職人として培った技術的背景に基づくものです。

RY8は単なる収納家具ではありません。比例、構造、素材が統合された「使う建築」として機能し、住空間に静かな秩序をもたらします。流行に依存しない構成と明快な構造美は、デンマーク・モダニズムにおける収納家具の到達点の一つといえます。

PAGE TOP