Story
ボーエ・モーエンセン（1914–1972）は、デンマーク・モダンデザインを代表する建築家兼家具デザイナーであり、「デモクラティックデザイン（民主的デザイン）」の旗手として知られています。彼の仕事は、師であるコーア・クリントの厳格な分析的手法を基盤にしつつ、日常生活を豊かにするための実用的で手頃な価格の家具を提供するという使命に貫かれていました。
彼の代表作であるJ39「みんなの椅子」は、シェーカー家具に着想を得たシンプルで堅牢な椅子であり、何十年にもわたって愛され続けています。また、ハンティングチェアやスパニッシュチェアといった作品は、オーク材とサドルレザーを組み合わせ、素材の誠実さと経年変化を尊重したラウンジチェアとして高く評価されています。
モーエンセンのデザインは、時代を超えて使い続けられる耐久性と、生活空間に「静けさ」をもたらす控えめな美学が特徴です。装飾を排し、素材と機能を正直に表現する彼の哲学は、国際的なモダニズムと異なり、デンマークデザイン独自の人間中心的な姿勢を体現しました。
彼はまた、戦後の住宅事情に合わせた収納システムを数多く考案し、家具を単体としてではなく「生活のためのインフラ」として設計しました。これにより、家庭に秩序と快適さをもたらすと同時に、デンマークデザインの民主化を推し進めました。
今日、彼の思想は「ファストファニチャー」の対極にある存在として再評価されています。耐久性、誠実な素材、人間の幸福を重視するモーエンセンの哲学は、現代の暮らしにおいても大きな意義を持ち続けています。
About
Year: 1914–1972
Place: Aalborg（オールボー）
Manufacturer: FDB Møbler（FDBモブラー）、Fredericia（フレデリシア）、Fritz Hansen（フリッツ・ハンセン）、Karl Andersson & Söner（カール・アンデション＆ソネ）
History
1914: オールボーに生まれる
1934: 家具職人としての資格を取得
1936: コペンハーゲン芸術工芸学校に入学
1938: 王立芸術アカデミーに進学し、コーア・クリントに師事
1942: アカデミー卒業後、FDBモブラー主任デザイナーに就任
1945: ハンス・J・ウェグナーと共に「スポークバックソファ」を発表
1947: J39「みんなの椅子」をデザインし大成功を収める
1948: コペンハーゲン家具職人ギルド展にて収納家具を発表
1950: 自身のデザイン事務所を設立
1950: 「ハンティングチェア」を家具職人ギルド展で発表
1953: 「Shaker Table」をデザイン
1954: グレーテ・マイヤーと共に「Boligens Byggeskabe」を発表
1955: Karl Andersson & Sönerと協力し「Øresund」シリーズを開始
1955–1967: Øresundシリーズが北欧市場で広く展開
1958: 「スパニッシュチェア」を発表し国際的評価を獲得
1960: Fredericia社の主要デザイナーとして活動開始
1962: Model 2213ソファをデザインし、デンマーク政府庁舎にも採用
1963: スポークバックソファがフレデリシアより本格生産開始
1964: 公共建築向けにベンチや収納家具を多数設計
1965: 日本の影響を受けた家具デザインを発表
1966: デンマークデザインカウンシルに参加し、国際展示に出展
1967: Øresundシリーズが完成を迎える
1969: Fredericiaと共に新しいソファシリーズを展開
1970: 社会的住宅向けの収納・テーブルシステムを提案
1971: コペンハーゲン家具展にて晩年の作品を展示
1972: コペンハーゲンにて死去
Furniture
・J39 | The People’s Chair
・Spoke-Back Sofa No.1789
・Hunting Chair No.2229
・Spanish Chair No.2226
・Øresund Series
・Boligens Byggeskabe
・Shaker Table Series
・Model 2213 Sofa
・Model 2257 Daybed
・China Chair Reinterpretation
・Folkestolen Variants
・Øresund Dining Table
・Cabinet System Series
・Wall-mounted Storage System
・Folding Chair Models
・Model 323 Chair
・Desk Model 131
・Sideboard Øresund
・Sofa 2333
・Dining Table 6284