Danish Art Weaving | デニッシュ・アート・ウィービング


Story

Danish Art Weaving(DAW)は、デンマークの伝統織物文化を継承しつつ、モダンデザインの発展に大きな役割を果たしたテキスタイルメーカーです。設立の背景には、北ユトランド地方で伝統的な厚手織物「Olmerdug(オルマーデゥグ)」を蒐集していたマリー・クリステンセンと、実業家ペーター・キェルセンの出会いがありました。商業的な動機ではなく、文化遺産を未来へ残すという情熱から始まった点に同社の独自性が表れています。

 

戦後の物資不足を創意工夫で乗り越え、1949年に「Vævegården」として工房を立ち上げました。その後社名をDanish Art Weavingと改め、ウール、リネン、コットンといった天然素材を中心に、伝統的な手織りと機械織りを併用しながら事業を発展させました。教会の祭服のような特別な用途には手織機を残しつつ、1970年代以降は効率的な生産体制を構築しています。

 

デンマークモダンデザインの黄金期には、ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセンといった巨匠の家具に生地を提供しました。家具のフレームを支えるだけでなく、色彩や触感を加え、作品に人間的な温かみを与えた存在として、デンマークデザインの美学を完成させる重要な役割を果たしました。特にアルネ・ヤコブセンが設計したSASロイヤルホテルでは、DAWの「Royal」コレクションが用いられ、総合芸術作品の一部として記録されています。

 

製品ラインは「Diplomat」や「Consul」といったクラシックなシリーズから、「Rainbow」などの鮮やかなストライプ柄、さらにはアイルランドで手織りされる「McNutt」コレクションまで幅広く展開。いずれも高い耐摩耗性や耐光性を備え、マーチンデール値50,000以上という厳しい基準を満たすものが多く、住宅のみならず公共施設やホテルでも使用されています。

 

現代においても、DAWはティルストラップに拠点を構え、製造の一部を海外に移しながらも、デザイン開発と品質管理はデンマークに残しています。サステナビリティにも積極的に取り組み、OEKO-TEX®やEUエコラベルといった国際認証を取得。自然素材へのこだわりを環境責任と結びつけ、未来を見据えたブランド戦略を展開しています。

 

特に日本市場においては、大桑商店株式会社を通じて確固たる地位を築き、専門家やコレクターから「北欧ヴィンテージ家具の修復において最も信頼される生地」として高く評価されています。デンマークと日本の美意識に共通するシンプルさと素材への敬意が共鳴し、今日に至るまで深い文化的な結びつきを生み出しています。


About

Year:1949 – 現在
President:Peter Kjeldsen、Marie Christensen ほか
Designer:Hans J. Wegner(ハンス・ウェグナー)、Finn Juhl(フィン・ユール)、Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)
Place:Tylstrup(ティルストラップ)、Denmark(デンマーク)


History

1949:Marie ChristensenとPeter Kjeldsenが「Vævegården」を設立
1950:伝統織物「Olmerdug」の復興を開始
1951:戦後の物資不足を克服し、羊毛の調達ルートを確立
1952:家具職人ギルドの展示会に参加、注目を集める
1955:Hans J. WegnerやFinn Juhlの家具に生地を供給
1957:事業拡大に伴い家具店を開設、Kjeldsenが事業を売却
1960:Arne Jacobsen設計SASロイヤルホテルの「Royal」コレクション提供
1962:カラーパレットを拡張し、建築用途にも対応
1965:Fredericiaなど主要メーカーに生地を供給
1970:クラシックシリーズ「Diplomat」を発表
1972:最初の機械式織機を導入、生産体制を近代化
1975:公共施設・教会向けに特別仕様の手織り生地を提供
1980:Consulコレクションを展開、ヘリンボーン柄を再評価
1985:国内外で輸出を強化、日本市場にも進出
1990:家具修復用として「Olmerdug」を再解釈し復刻
1995:国際ホテル・劇場に採用されブランド価値を強化
2000:サステナビリティ戦略を導入、水資源削減と染色改善を実施
2005:OEKO-TEX®認証を取得、国際基準を満たす生地を提供
2010:アイルランド手織り「McNutt」コレクションを発表
2012:日本においてヴィンテージ家具修復用生地として高評価を獲得
2015:EUエコラベルを取得、環境対応を明確化
2017:コペンハーゲン市庁舎など公共施設に納入実績を拡大
2020:デザインアーカイブを再編成し、ブランド史を再構築
2023:世界的な展示会でクラシックコレクションを発表し再評価を獲得
2025:創業75周年を迎え、ヘリテージブランドとして国際的評価を持続


Furniture

・Royal Collection
・Rainbow Collection
・Diplomat Collection
・Consul Collection
・Olmerdug Collection
・McNutt Collection
・Nice Collection

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